不安喚起し人を支配 被害者救済弁護士が指摘する旧統一教会の問題点

安倍晋三元首相が銃撃された事件で、容疑者の一家が宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に献金を繰り返して破産していたことが明らかになって、改めて「霊感商法」問題に注目が集まっている。旧統一教会の被害者救済に30年以上、携わっている札幌弁護士会の郷路征記弁護士(79)が24日までにオンライン講演し、元信者らからの聞き取りを基に旧統一教会の問題点を指摘した。その手口とは――。【山田豊】
迷信を現実のように思い込ませるために教会のビデオや映画で地獄の恐ろしさを疑似体験させる。亡くなった身近な人が地獄で苦しんでいると思い込まされ、供養のために必要だと献金を求められるようになる。「金で済むのなら安い」と考え、破産するまで借金を繰り返す。家族や友人に批判されても「今は分かってもらえなくても霊界にいけば理解してもらえる」と思うようになる。郷路氏は、そのような元信者と長く接してきた。
郷路氏は1987年、旧統一教会に関する案件をきっかけに、被害者救済に関わるようになった。その後、約80人の被害者を原告として教会を相手に裁判で争ってきた。経験から教会側の手口や被害者の心理状態を知り尽くしている。郷路氏は「多少の手口の変更はあれど、『統一原理』が真理だと教え込むという点で30年間の手口の本質は変わらない」と語る。
郷路氏が80年代から2010年代に教会に入会した元信者などから聞き取った話によると、統一教会の教義は、3人の教会員を獲得しなければ「救ってもらえない」と教え込まれるという。必死に会員の獲得に走り回るようすり込まれ、教会幹部と念入りに連絡を取り合いながら勧誘活動を進めることになる。
預貯金100万円以上や素直な人かどうか、宗教心があるか――などが勧誘対象を選別する際の重要なポイントになるという。「献金させることが目的だから、金がない人は誘われない。ただし、預貯金が少なくても若者などの労働力として使い勝手がよい場合は誘われる」と話す。また、物事に疑問を持つ傾向が強い人は対応に手間がかかるので敬遠されるといい、「あの世の存在や占い、目に見えないものの力などをまったく信じない人も対象外になりやすい」と説明する。
郷路氏は安倍元首相を銃撃し、殺人容疑で送検された山上徹也容疑者=鑑定留置中=の母親の例に触れ、「統一教会は身近な人の死も勧誘の重要なポイントだと判断している」と指摘。身近な人の死は、人の心に深い傷を与え、宗教に目覚める契機になりやすいという。勧誘の過程で「あなたの人生は運勢が80%。努力は20%」と話し、自分の努力でどうにもならない身近な人の死という体験と重ね合わせて信じ込ませるという。郷路氏は「運勢の影響力が絶対的だという説明に『そうかもしれない』と反応させる巧みな手法で攻め入る」とみる。
教会員は勧誘対象者に「不幸の原因は先祖の因縁にある」とも指摘するという。「悪なる先祖が悪霊として働くと、才能が発揮できずに苦しんだり、事故やケガや病気になる。家庭運にも恵まれず、離婚や子どものことで心配事が多くなり、運の悪い人生になる」と信じ込ませ、「あなたこそがこの家庭の運勢を変えなければならない中心人物です」と語り、使命感や責任感に訴える。
郷路氏は教会について、脅迫の文言を使わずに相手の想像力に働きかけ、不安を喚起して人の意思決定を支配する方法を熟知していると指摘する。郷路氏は「不安は意思決定を支配するために最も強力な感情。揺さぶられた場合、理性は働かなくなる」と語る。「自分の弱さや、つい反応してしまう怖さを知り、バリアーを構築しておく必要がある」と注意喚起した。