新型コロナウイルスの流行「第7波」を受け、入院患者との面会を再び制限する医療機関が相次いでいる。面会は患者や家族の心のケアに欠かせない一方、不特定多数の人が出入りすることでクラスター(感染者集団)の発生リスクが高まる。人数や時間の縮小、オンラインの活用など病院ごとに工夫を凝らしながら、感染対策との両立を模索している。
東京都町田市の鶴川記念病院。25日午後、脳梗塞で入院している鈴木富三さん(70)とオンラインで面会した妻のみどりさん(66)が、画面越しに手を振りながら呼びかけた。
「お父さん、おーい。眠い?」
続けて、次女の等々力富美さん(39)が「(妊娠中の長女が)8カ月になったよ。男の子だって」と報告すると、後遺症で言語障害の残る富三さんは、まばたきで反応した。
富三さんが同院に入院したのは第7波に入る前の6月末。当初は対面できたが、感染が急拡大した7月11日に原則オンラインに限定され、パソコンの扱いが苦手なみどりさんは顔を見られない日々が続いた。
この日は病院が用意したパソコンと病室のタブレットをつないで面会が実現。画面越しにわずか10分間だったが、「全く会えないより、様子が分かってよかった」と胸をなでおろしたみどりさん。今後の制限解除に期待し、「直接会ってさすったりハグしたりすることで、病気がいいほうに向かってほしい」と話した。
同院はコロナ禍以降、感染状況などに応じ、面会中止や解除を柔軟に判断。第6波が収まった4月以降は1回15分間、同時に2人まで会えるように設定していた。担当者は「患者は家族に会えないとストレスが大きく、家族も顔を見て話せないことで不安が募る」と面会の意義を強調する。
第7波でのオンライン面会は、食事の介助や自力で歩行できない患者らが入る療養型の病棟を中心に1日平均3家族が利用。担当者は「ベッドのそばで触れ合えるのが一番だが、画面越しでも表情を見ることで安心できる」と効果を語る。
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妊婦や子供の患者を抱える医療機関も、面会による患者、家族双方のメンタルケアと感染拡大リスクのバランスに頭を悩ませる。
山王病院(港区)は7月26日以降、検査で陰性を確認後48時間以内で、当日に体調不良がない場合に限り、30分間の面会を許可。親族とパートナーが対象だが、産科ではパートナーのみに制限している。
面会の制限・解除の判断には感染状況だけでなく、院内の看護体制も考慮に入れる。担当者は「陽性患者が出れば、看護師のマンパワーが割かれ、面会に対応しきれないこともある。何よりも院内クラスターを出さないようにしないといけない」と説明する。
多数の小児患者が入院している国立成育医療研究センター(世田谷区)ではコロナ禍であっても、保護者2人が1人ずつ病室に入り、子供と対面できるように配慮。第6波の収束後には面会時間を最長9時間まで伸ばしていた。
しかし、感染の広がりを受け、7月21日以降は4時間までに短縮せざるを得なくなっている。
小児患者やその家族を心理面でサポートする児童・思春期リエゾン診療科の田中恭子医師(50)によると、海外の論文では、親としての責任感から療養中の子供と会えないことで、親の不安が高まる傾向があることが報告されている。
病院側もこれまでの感染対策と子供のケアを最大限続けるが、田中氏は「限られた面会時間でも両親が普段と変わらずに見守っているということが、子供の安心につながる。両親も不安を感じると思うが、セルフケアをして会えるときに愛情を注いでほしい」としている。(深津響)