福島県双葉町に11年ぶり役場機能戻る 居住再開へ新庁舎開庁式

2011年3月の東京電力福島第1原発事故から唯一全町避難が続く福島県双葉町で27日、町内に建てた役場新庁舎の開庁式が開かれた。役場の本体機能はこれまで同県いわき市の仮庁舎にあり、町内に戻るのは原発事故以来11年5カ月ぶり。30日には特定復興再生拠点区域(復興拠点)で避難指示が解除される予定で、町民の居住も再開する。役場は9月5日から業務を始め、復興への本格的な歩みが始まる。
式には町や国の関係者ら約80人が出席。伊沢史朗町長が「町民に親しまれ、交流が深まる町づくりの拠点になるよう努めたい」とあいさつした。西村康稔経済産業相も「新たな復興への大きな一歩が始まる。全力で応援したい」と述べた。
庁舎玄関ではテープカットがあり、地元の太鼓保存会のメンバーが息の合った音色をとどろかせて祝った。会長で、同県本宮市に避難している今泉春雄さん(69)は「新しい町の拠点で演奏するのは格別。古里への思いが強くなった」と息を弾ませながら語った。
軽量鉄骨2階建ての新庁舎は、延べ床面積3145平方メートル、総工費は14億6600万円。帰還する町民を温かく迎えるというコンセプトで、木材をふんだんに使ったぬくもりのあるデザインを施した。1階の窓に面した廊下は「エンガワモール」として広々としたスペースを確保。屋根には太陽光パネルを設置し、災害時の電源も確保する。
原発事故で、町の役場機能は埼玉県加須市やいわき市など4カ所を転々とした。新庁舎には、いわき市から職員約120人のうち100人程度が移る。避難を続ける町民のために、両市などに置いている窓口機能は残す。【柿沼秀行】