新型コロナウイルスの感染「第7波」による国内の死者数は連日200人を超え、23日には343人と過去最多となった。世界保健機関(WHO)の統計で、日本の週間死者数は1624人と米国の2714人に続き世界2位だ。だが、地方自治体からは「直接の死因はコロナ以外が大半」との声も出ている。
愛知県の大村秀章知事は15日の定例記者会見で、直近のコロナ関連の死者について「ほとんどコロナで亡くなっていない」と発言した。
大村氏は「他の病気や事故で亡くなる方も念のため(検査し)陽性だったらコロナで亡くなった方に加えるのは合理的ではない。ミスリーディングする恐れがある」と述べ、死者数の定義や公表方法の見直しを国に求めている。
県の発表では、死因について「新型コロナウイルス感染症」「新型コロナウイルス肺炎」という表記もある。県感染症対策課によると、心不全や糖尿病などの基礎疾患を持つ患者も含まれているといい、「新型コロナの影響のみによって死亡した患者はいないというのが知事の趣旨だ」と説明する。
厚生労働省に対策を助言する専門家組織の会合で提出された資料では、神奈川県が今年1~2月に死亡した陽性者312人のうち、主たる死因がコロナだと判断できるのは166人(53・2%)にとどまり、コロナ以外の疾患や老衰と判断できるのが100人(32・1%)だった。
東北大災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は「コロナ以外の一般医療においても現場の医師が死亡の主因を示すのは難題であることが多い。コロナによる直接死とそれ以外を完全に区別するのは困難だが、一般医療に戻す時期に来ていることは確かだ」と強調した。
死者数が過去最多となる一方、重症者数は28日公表分で627人で、第6波のピーク時の約4割程度だ。高齢者のワクチン接種が進んで重症化する事例が減る一方、発熱や喉の痛みで水分補給ができなくなり、「衰弱死」する高齢者も多いという。人工呼吸器や人工心肺(エクモ)の使用、集中治療室(ICU)での管理といった「重症者」の定義が混乱を生じさせているとみる向きもある。
児玉氏は「当初はコロナによる肺炎が徐々に悪化し、重症病床を経て亡くなるケースが大半だった。オミクロン株では、たとえば脳卒中を基礎疾患として持つ人が発熱した場合、脱水症状で誤嚥や心筋梗塞などを併発し、軽症や中等症のまま死に至るようなケースが増えている」と指摘した。