安倍晋三・元首相の「国葬」に対して、批判の声が日に日に高まっている。全額国費負担となるだけに政府は「費用を抑える方向」と必死だが、たった「2.5億円」では済みそうにない。一体、血税はいくらつぎ込まれるのか。専門家の協力のもと、検証した。【前後編の前編】 吉田茂の時より大規模 安倍晋三・元首相の「国葬」が9月27日、日本武道館で営まれる。 国葬は政府が葬儀の全費用を負担する国家行事で、戦後は貞明皇后(大正天皇の皇后)、吉田茂・元首相、昭和天皇の3例しか行なわれていない。 1967年の吉田元首相の国葬には、70か国を超える外交団をはじめ、国会議員や政府・自治体関係者など約6000人が参列した。岸田首相は弔問外交を展開したい意向で、世界約200か国・地域と80の国際機関に案内状を出し、参列者6400人を想定するなど葬儀の規模は吉田氏を超えるものになりそうだ。 だが、国民の視線は厳しい。報道機関の世論調査では「国葬反対」が毎日新聞53%、テレビ朝日51%、購読者に安倍氏の支持層が多いとされる産経・FNNの合同調査でも51.1%と過半数を占めている。テレビ朝日の調査では、反対の理由で最も多かったのは「国の予算を使って行なうから」(37%)という意見だ。 国葬の研究で知られる宮間純一・中央大学教授が語る。 「日本で戦前戦中期に行なわれた国葬は、国家や天皇のために尽くした『偉大な人物』を賛美する場でした。こうした異論を封じる性格を持つ国葬は、戦後民主主義になじみません。歴史の検証なしに国葬を再現するのは問題です。手続きの面から見ても国会で議論を尽くすべきだったが、閣議決定だけで押し切った。これも民主主義に反している。安倍元総理の政治的功績の評価とは関係なく、私は今の日本に国葬自体が不要だと思います」 では、一体、安倍氏の国葬に国民の税金がいくら使われるのか。 内閣府の国葬儀事務局の担当者は、2年前に営まれた中曽根康弘・元首相の「内閣・自民党合同葬」の費用が約2億円(国と自民党が折半負担)だったことを引き合いに、「それが一つのメルクマールとなって検討されている」と説明。その後、今年度予算の予備費から「2.5億円」が支出されることとなった。 たったの2.5億円。世界中からVIPが参列する国葬がそんな金額で収まるはずがない。 『週刊ポスト』は過去のデータや専門家の検証をもとに、「本当の費用」を試算した。 菊の花だけで1600万円
安倍晋三・元首相の「国葬」に対して、批判の声が日に日に高まっている。全額国費負担となるだけに政府は「費用を抑える方向」と必死だが、たった「2.5億円」では済みそうにない。一体、血税はいくらつぎ込まれるのか。専門家の協力のもと、検証した。【前後編の前編】
吉田茂の時より大規模
安倍晋三・元首相の「国葬」が9月27日、日本武道館で営まれる。
国葬は政府が葬儀の全費用を負担する国家行事で、戦後は貞明皇后(大正天皇の皇后)、吉田茂・元首相、昭和天皇の3例しか行なわれていない。
1967年の吉田元首相の国葬には、70か国を超える外交団をはじめ、国会議員や政府・自治体関係者など約6000人が参列した。岸田首相は弔問外交を展開したい意向で、世界約200か国・地域と80の国際機関に案内状を出し、参列者6400人を想定するなど葬儀の規模は吉田氏を超えるものになりそうだ。
だが、国民の視線は厳しい。報道機関の世論調査では「国葬反対」が毎日新聞53%、テレビ朝日51%、購読者に安倍氏の支持層が多いとされる産経・FNNの合同調査でも51.1%と過半数を占めている。テレビ朝日の調査では、反対の理由で最も多かったのは「国の予算を使って行なうから」(37%)という意見だ。
国葬の研究で知られる宮間純一・中央大学教授が語る。
「日本で戦前戦中期に行なわれた国葬は、国家や天皇のために尽くした『偉大な人物』を賛美する場でした。こうした異論を封じる性格を持つ国葬は、戦後民主主義になじみません。歴史の検証なしに国葬を再現するのは問題です。手続きの面から見ても国会で議論を尽くすべきだったが、閣議決定だけで押し切った。これも民主主義に反している。安倍元総理の政治的功績の評価とは関係なく、私は今の日本に国葬自体が不要だと思います」
では、一体、安倍氏の国葬に国民の税金がいくら使われるのか。
内閣府の国葬儀事務局の担当者は、2年前に営まれた中曽根康弘・元首相の「内閣・自民党合同葬」の費用が約2億円(国と自民党が折半負担)だったことを引き合いに、「それが一つのメルクマールとなって検討されている」と説明。その後、今年度予算の予備費から「2.5億円」が支出されることとなった。
たったの2.5億円。世界中からVIPが参列する国葬がそんな金額で収まるはずがない。
『週刊ポスト』は過去のデータや専門家の検証をもとに、「本当の費用」を試算した。
菊の花だけで1600万円