ながら運転でドラクエウォーク、自転車の男性はねて死なす…位置情報ゲームに警鐘

車の運転中にスマートフォンなどを操作する「ながら運転」が後を絶たない中、名古屋市でスマホの位置情報を利用したゲームをしながら運転したことが原因とされる死亡事故が再び起きた。事態を重く見た愛知県警は、ゲーム運営会社に運転中には操作などができなくするよう改善を要請。事故遺族からは強い規制を求める声も上がる。(西沢由華)
事故が起きたのは5月31日午後7時45分頃。同市西区の信号のない交差点を自転車で横断中の男性(当時55歳)が、帰宅途中だった県立高校の元教諭の男性(45)の軽乗用車にはねられて死亡した。
自動車運転死傷行為処罰法違反容疑で県警に逮捕され、その後釈放された男性は調べに対し、「スマホで『ドラゴンクエストウォーク』をしながら運転していた」と供述。事故を受けて県教育委員会は今月9日、男性を停職4か月の懲戒処分とし、男性は同日付で依願退職した。
ドラクエウォークはスマホの位置情報を利用し、移動する先々でモンスターと戦ったり、アイテムを取得したりするゲーム。場所限定で発生するイベントもあり、各地への移動を重ねるほど楽しさが深まる仕組みとなっている。
運営会社のスクウェア・エニックス(東京)によると、車の運転者らがゲームをできないよう、一定以上の速度で移動すると警告を表示したり利用を制限したりする機能を設けているという。ただ、電車などで移動してもある程度の利用は可能で、インターネット上では車や自転車に乗りながらゲームをしたとの書き込みが散見されるのが実情だ。
県警によると、位置情報ゲームが原因の事故で死者が出たのは、県内ではこれで3例目となった。2016年10月には、人気ゲーム「ポケモンGO」をしていた運転手のトラックに一宮市の小学4年の児童(当時9歳)がはねられて亡くなり、大きな社会問題となった。
今回の事故を受けて県警は6月上旬、運転中にはアプリを動かせないよう改善することを同社に要請した。ただ、同社は「対応についてはなんとも言えない」と述べるにとどまり、県警幹部も「運転者以外の同乗者や電車で移動する人たちがゲームをする権利まで縛るのは難しい」と明かす。
児童の父親(52)は愛息を事故で亡くして以降、再発防止のために全国で講演活動を行っている。父親は今回の事故に「またかという思い。ながら運転による事故は殺人と同じだと認識すべきだ」と憤り、「悲劇が繰り返される以上、走行中はゲームを利用できないようにすべきだ」と訴える。