元理事へ3ルートで資金提供か 五輪参入「口利きビジネス」解明へ

東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー選定を巡る汚職事件は、東京地検特捜部が5日に大阪市の広告会社「大広」に家宅捜索に入ったことで、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)=受託収賄容疑で逮捕=への資金提供疑惑が「AOKIホールディングス(HD)」「KADOKAWA」に「大広」を加えた3ルートに拡大した。特捜部は、高橋元理事が五輪事業への参入を目指す複数の企業を組織委側に仲介して対価を得ていたとみて、“口利きビジネス”の全容解明を目指している模様だ。
「東京地検です」。5日午前10時前、特捜部の係官が大阪市北区のビル12階にある大広本社の受付窓口で告げた。係官数人はその後、同社内に入り捜索を始めた。
信用調査会社によると、大広は1944年創業で業界4位。2003年に「博報堂DYホールディングス」の完全子会社となった。大広は大手広告会社「電通」が業務を独占していたスポンサー集めに事実上の下請けとして加わるため、電通元専務の元理事を頼ったとみられる。
関係者によると、元理事が組織委側に大広をスポンサー契約に関わらせるよう要請し、大広がスポンサー集めの「販売協力代理店」に選ばれたとされる。大広はその後、語学教室運営会社のスポンサー契約業務を担い、同社がスポンサーに決まった後に元理事の知人男性が代表を務めるコンサルティング会社に約1400万円を送金した疑いが持たれている。
知人男性は元理事と同じ電通OB。特捜部は、元理事と知人男性は事実上一体で、知人男性の会社への送金が「みなし公務員」だった元理事への賄賂に当たるとみている模様だ。
大広の幹部は8月上旬の取材に「語学教室運営会社は電通より我が社の方が付き合いが深かった。元理事を通じて電通に紹介してもらったが、(元理事には)謝礼などは一切払っていない」と説明した。
KADOKAWA会長「賄賂の認識ない」
また、元理事の知人男性のコンサル会社は、出版分野でスポンサーとなったKADOKAWAからも約7000万円を受領していたことが既に判明している。知人男性は電通時代からKADOKAWAと付き合いがあったといい、東京五輪の開催が決まった13年9月以降、同社からスポンサーになれないか相談を受けていたとされる。元理事は男性からの依頼で、KADOKAWAのスポンサー契約を組織委側に仲介した疑いがあり、特捜部が経緯を捜査している。
KADOKAWAの角川歴彦(つぐひこ)会長は5日、報道各社の代表取材に応じ、スポーツ事業のコンサルタント料として約7000万円を元理事の知人男性の会社に支払ったことを認めた。知人男性の会社からは業務に関する報告書を受け取っていると説明し、知人男性との五輪に関するやり取りは現場の社員に任せ、事後報告を受けたとした。また、「高橋元理事に賄賂を渡した認識はない。部下の社員に不正はなかったと信じている」と強調した。
一方、AOKIHDを巡っては特捜部が8月17日に同社側から5100万円の賄賂を受け取ったとして元理事を受託収賄容疑で逮捕し、同社側は前会長の青木拡憲(ひろのり)容疑者(83)ら幹部3人を贈賄容疑で逮捕している。
計4容疑者については勾留期限の6日、特捜部が起訴するかどうかを判断するとみられる。関係者によると、AOKI側3人は贈賄容疑を認め、元理事は受託収賄容疑を否認しているという。【最上和喜、柿崎誠、北村秀徳、古川幸奈】