角川会長逮捕と捜査の行方 ワンマン経営〝ツグの一声〟で全て決まる絶大な影響力 五輪汚職「政界などにつながる契機に」若狭氏

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、捜査は「出版界の顔」に及んだ。贈賄容疑で逮捕されたKADOKAWA会長の角川歴彦(つぐひこ)容疑者(79)は、社内で「鶴の一声」ならぬ「ツグの一声」で全てが決まる絶大な影響力を持ち、東京地検特捜部も当初から立件の標的にしていたとみられる。捜査の手は次にどこに伸びるのか。
逮捕容疑は、大会スポンサーの選定で有利な取り計らいを受けた謝礼などとして、2019年9月~21年1月にかけて大会組織委員会元理事、高橋治之容疑者(78)=受託収賄容疑で再逮捕=の後輩、深見和政容疑者(73)=同容疑で逮捕=のコンサルタント会社に計約6900万円を入金した疑い。
角川容疑者は17年、高橋容疑者と料亭などで少なくとも2回面会。自ら交渉に関わり、高橋容疑者への賄賂の提供も認識していたとみて特捜部は調べている。角川容疑者は贈賄容疑を否認しているとみられる。
会合は17年4月と5月にあり、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相(85)が別会社を入れることに難色を示したことの調整だったとみられる。5月の会合は東京・赤坂の料亭であり、角川容疑者と高橋容疑者、深見容疑者の他、森氏と別会社の幹部らも出席していた。結局、別の出版社は辞退した。
逮捕前、高橋容疑者へ賄賂を渡したかどうか記者から問われると、「全くありません、全くありません」と声を荒らげた角川容疑者。その様子を見た元社員は「普段は本音を見せない典型的な『タヌキ』。あんなに感情的になっている会長は珍しい」と驚いた。
角川容疑者は1966年、父、源義氏が創業した角川書店に入社。兄、春樹氏との確執で92年に退社したが、春樹氏が薬物事件で逮捕されると、翌年社長として復帰。事業を多角化し、KADOKAWAを総合エンターテインメント企業に成長させた。別の元社員は「その意向は絶対」「どこまでいっても会長の会社。末端の社員まで影響している」と話す。
角川容疑者の逮捕について元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「家宅捜索や、証拠物の内容から会長の関与が認められるものがあったのだろう」と指摘する。
捜査はさらに展開するのか。若狭氏は「捜査を『横』に広げることで、角川容疑者の供述などから、政界など高橋容疑者よりも上の『縦』につながる契機が出てくる可能性があるとみて、特捜部は動いているのではないか」との見方を示した。