2021年2月に鹿児島市内のホテルで幼児2人、福岡県飯塚市の団地で男児1人が遺体で見つかった事件を巡り、殺人や傷害致死などの罪に問われた父親で住所不定、無職、田中涼二被告(42)に対する裁判員裁判の初公判が20日、福岡地裁(武林仁美裁判長)であった。自らも自殺を図り車いすで出廷した被告は、幼児2人への殺人罪は「間違いない」と認めた一方、男児への傷害致死罪は「暴行で死んだかはよく分からない」などと一部否認。弁護側も傷害致死罪の成立について争う姿勢を示した。
起訴状によると、田中被告は当時住んでいた飯塚市の自宅などで21年1月9日ごろから、養子で小学3年の大翔(ひろと)さん(当時9歳)に暴行を繰り返し、2月16日に大腿(だいたい)部打撲による外傷性ショックで死亡させ、遺体を自宅に放置。同26日には鹿児島市内のホテルの客室で、長男蓮翔(れんと)ちゃん(同3歳)と長女姫奈(ひな)ちゃん(同2歳)を首を絞めるなどして殺害したとしている。
検察側は冒頭陳述で、田中被告は20年12月に離婚して子供を引き取ったが、家事や育児でストレスを抱え、元妻の連れ子だった大翔さんの言動に立腹し、暴行するようになったと指摘。その結果、大翔さんが亡くなったため、警察に捕まると考えた被告は、残った2人の子供を道連れに自殺をしようとしたと主張した。
被告はレンタカーで宮崎県内を転々とし、最後は電車で移動した鹿児島市内のホテルで2人を殺害。自ら胸を刺してホテル4階から飛び降りたが、病院に搬送され一命を取り留めた。部屋には「ストレスでおかしくなった。この子たちが大きくなるまで立派に育てたかった」などと書かれたメモが残されていたという。
一方、弁護側は「大翔さんは気管支炎を発症し、循環器不全で死亡した可能性を否定できない」と反論。「幼少期に暴力的なしつけを受けた被告の成育歴が事件の背景にある。愛情を持って3人の子供に接したが、育児ストレスで大翔さんに暴行した」と説明した。
この日は元妻も法廷に立ち、田中被告について「パチンコで増やそうとお金を使い込み、実子ではない大翔に怒鳴るなど厳しく当たっていて、よく(夫婦で)もめた」と証言。「私は仕事がなく、生活が安定したら子供たちを引き取るつもりで離婚した。ひたすら反省してほしい」と被告を非難した。【平塚雄太】