県域水道一体化、奈良市が参加見送りへ 議会も市民も賛同せず

奈良県が目指す県域水道の一体化について、慎重な姿勢を示してきた奈良市が参加を見送る方針を固めた。市関係者が明らかにした。県が9月に提示した新たな財政支援を考慮しても、市の想定よりも水道料金が上昇するリスクが高いと判断した模様だ。市は近く、県や一体化に参加予定の自治体でつくる協議会に不参加を伝える。
全体の給水量の約3割を占める奈良市が離脱することで、一体化によるコスト削減効果は大幅に減少するとみられ、県の構想に大きな影響を与えそうだ。
一体化構想は市町村の上水道事業を2025年度から統合するもので、17年10月に県が提唱。参加自治体が出資してつくる「県広域水道企業団」が、浄水場などの施設を管理し、水道料金も一律にする。奈良市を含む27市町村と県は設立準備協議会を組織。16ある浄水場を7に減らし、各自治体の類似業務も整理することで、効率的な水道行政を実現する計画だった。
だが奈良市は、県の試算で浄水場などの設備改修費用が過剰に見積もられているなどと懸念。運営費用が膨らんだ結果、市が単独で事業を継続するよりも水道料金が大幅に上昇するとして、参加に慎重な姿勢をみせてきた。
このため県は9月、老朽化する配水管の改修整備費用計438億円のうち、県が当初案の2倍にあたる292億円を支援すると急きょ表明。企業団の財政負担は半額の146億円にとどまり、将来的な水道料金の上昇も緩やかになるとして、参加を迷う奈良市に誘いをかけていた。
だが、その後の市議会でも各会派から参加に否定的な意見が続出。県の追加支援は一時的なものに過ぎず、料金上昇を抑えるための効果は薄いという指摘のほか、一体化後も市が単独で行う下水道事業に関する運営方法が未定で拙速な議論は避けるべきとの意見が大半を占めた。市民の間でも参加を見送るよう求める署名活動が起きていた。
市も、県の追加支援があっても料金面でのデメリットは解消しきれないと判断。市議会や市民の意見も踏まえ、単独で水道事業を続けることを決めた。
県は今秋にも、一体化後の財政運営などをまとめた基本計画の策定を目指している。協議会に参加しているほかの26市町村は11月にもそれぞれで参加の是非を決める予定。【林みづき】