水際対策緩和、旅行支援が一斉始動で賑わい再び…人手不足に不安も

水際対策の緩和や国内旅行支援などの政府の観光振興策が11日に一斉に始動し、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた観光需要を取り戻す環境が整った。空港は個人旅行の解禁を待ちわびた外国人観光客が入国審査に長蛇の列を作り、紅葉時期を間近に控えた観光地には宿泊予約が殺到した。一方、コロナ禍で離れた従業員の人材確保など新たな課題も抱えている。
羽田空港の国際線ターミナルには11日朝、東南アジアや欧州からの便が次々と到着。シンガポール便の客室乗務員によると、外国人の姿は10日の同じ時間の便よりほぼ倍増した。オーストラリアから家族で初来日した女性は「水際対策の緩和で来やすくなった。大阪や京都で日本文化を感じたい」と笑顔を見せた。
関西空港の国際線フロアも、大きなスーツケースをカートに載せた留学生や旅行客が行き交った。カナダから新婚旅行で訪れたティナ・ディンさん(31)は大阪、箱根、東京を巡る計画で、「夫は大阪のお好み焼きとラーメンが大好き。さっそく食べに行きたい」と声を弾ませた。
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今月下旬ごろから順次、紅葉の見頃を迎える神奈川県箱根町。同県が実施する「全国旅行支援」の受付が11日正午に始まると、宿泊施設は対応に追われた。
「予約や問い合わせの電話が鳴りやまない」と慌ただしい様子で話すのは、町内でホテルや旅館を展開する「一の湯グループ」の広報担当、大野正樹さん(37)。事前に電話対応スタッフの確保やウェブサイトの改良などを進めてきたが、サイトも一時閲覧しづらい状況が続いた。
大野さんは「土日の宿泊予約は、少し前から埋まりつつあった。平日もコロナ禍前に戻る後押しになってくれるのではないか」と期待感を示した。
平日3千円、休日1千円が発行される地域限定クーポンには土産物店からも期待が高まる。箱根湯本駅近くに出店する「昆布の長寿館」の近藤哲夫代表(67)は「プラスになるのは間違いない。クーポンの利用やインバウンドの増加に期待したい」と話した。
一方で、制度が分かりにくいとの指摘もある。高級リゾート旅館「箱根藍瑠」の渡辺健支配人(37)は「以前から予約している利用客に割引が適用されるかなど、分かりにくい点もあり、予約控えにつながっている」と訴えた。
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外国人観光客に人気の東京・浅草では、人手不足を不安視する声が漏れる。
観光人力車などを運営する「時代屋」はコロナ禍で休業を強いられた間に離職する従業員が相次ぎ、30人いた車夫は現在18人に減った。募集をかけ続けているものの、藤原英則代表(66)は「サービス業全体が人手不足で応募数が少ない」とため息をつく。
車夫は採用後、人力車の扱い方やガイドの知識など2カ月ほどの研修も必要になる。藤原さんは「サービスの質は落とせない。焦りもあるが、じっくり採用を進めたい」と力を込める。
外国人観光客向けに和服のレンタルや写真撮影を行う「サクラフォトスタジオ」の寺内寛代表(43)はコロナ禍の2年半を振り返り、「存続も危うかった」と打ち明ける。不定期で着付けを担当していた従業員の中には、新たな仕事を始める人もいた。
水際対策の緩和で、来年初頭までの予約が入り始めているが、以前のように従業員を確保できない状態が続いている。寺内さんは「以前働いていた人たちに戻ってきてもらえるよう待遇なども良くしていきたい」と話した。