環境省の「環境調査研修所」(埼玉県所沢市)が2020年度、コロナ禍で研修利用がゼロだったのに、施設の清掃管理費を減額しなかったとして、会計検査院が約1000万円の支出を「不当」と判断した。同様の問題は独立行政法人の施設などでも起きており、検査院は情勢に応じた契約変更の必要性を指摘している。(山下真範、谷所みさき)
「コロナの収束後に研修を再開しようと状況を注視していて、契約変更の時機を逸してしまった」
研修所の担当者は取材にそう明かした。
西武新宿線・航空公園駅の近くにある研修所は、防衛医科大学校など国の機関が立ち並ぶ広大な土地の一角にある。もともと米軍基地があった場所で、約2万平方メートルの敷地に実習棟や宿泊棟など7棟が並ぶ。
研修所によると、19年度までは、気候変動対策や動物愛護などの環境行政について主に泊まり込みで年間約50回の研修が行われ、国や自治体の職員ら約2000人が参加していた。だが、コロナ禍の20年度以降、研修はオンラインなどに切り替えられ、施設では一度も行われていない。
関係者によると、研修所は18年度から3年契約で、地元の清掃業者らでつくる共同事業体に清掃管理業務を発注した。委託額は年間約3600万円で、3年間で計約1億1000万円だった。
19年度までは、研修のある土曜日に3人態勢で宿泊棟を清掃したり、研修終了後に次の利用に備えて宿泊室を掃除したりしていた。だが、コロナ禍の20年度は、そうした業務は不要となり行われていなかった。
施設の管理人業務も、コロナ禍前は研修のある年間百数十日は2人態勢だったが、年間を通じて1人で済むようになった。
研修所は20年度も当初の契約通り約3600万円を支払ったが、契約書には、研修所側が「必要があると認めるとき」は契約金額などを変更できるとする規定が設けられていた。コロナ禍による研修中止を受け、契約変更を行うことが可能だったとみられる。
検査院は、実際に行われた清掃管理業務の内容を踏まえ、20年度の契約額を約1000万円削減することが可能だったと判断。同額が不当に支払われたとして環境省に対応を求める。
研修所は取材に「21年度以降はコロナ禍に対応した契約になっている」と説明している。
コロナ禍で利用が減った施設の管理費などを巡っては、検査院が今年3月、大学の施設などについても問題を指摘していた。
検査院は、国立大学法人や独立行政法人などが運営する全国の35施設を抽出調査した。この結果、6施設で、利用の大幅な減少などがあったのに、業務の見直しによる経費の削減を行っていなかった。
独法の労働政策研究・研修機構が運営する研修施設「労働大学校」(埼玉県朝霞市)は、年間約1120万円で清掃業務を委託。環境調査研修所と同様、コロナ禍で研修が中止され、教室や浴室などの清掃回数が激減していたのに、契約を変更していなかった。
同大学校の担当者は取材に「先を見通した判断ができなかった」と話した。
京都産業大の坂東俊矢教授(民法)によると、官公庁の契約では多くの場合、天変地異などのやむを得ない事情があれば契約変更を可能とする規定を設けているが、民間の契約ではこの規定がないことも多い。
コロナ禍で売り上げが激減した飲食店が賃料の支払いを巡って不動産会社とトラブルになるなど、民間でも契約内容が問題となるケースはあり、坂東教授は「契約書に規定がなければ、契約変更が認められない可能性が高まる。不測の事態で不利益を被らないよう、契約の内容を日ごろから確認しておくことが重要だ」と話している。