太陽光発電施設が住宅地や農地に建設されるケースで、周辺住民とのトラブルが起きている。計画を円滑に進めてもらうため1月にガイドラインを導入した埼玉県幸手市でも、事業者が十分な説明のないまま盛り土造成を始め、周辺住民から不安の声が上がる事態になった。造成は、ガイドラインを策定した市環境課も把握しておらず、行政内部の連携の不備も指摘されている。【萩原佳孝】
千葉県の事業者が同市下吉羽で計画。住宅や農地が点在する平坦地で、市への届け出によると計画面積約8000平方メートル、発電出力921キロワット。環境影響評価(アセスメント)の対象ではないが、比較的規模の大きな施設だ。
業者説明は数戸のみ、不安招く
造成は6月13日に始まった。地元区長によると、隣接数戸には事前に事業者側が訪問して伝えたが、ほとんどの住民は「寝耳に水だった」という。大規模な盛り土を不安視する声が上がり、区は事業者による住民説明会の開催を市に要望。住民主催の説明会が7月に2回開かれた。「不安は解消されなかった」(区長)が、造成は8月中旬に完了した。
市によると、事業者は2020年3月に経産省の計画認定を受け、農地転用手続きなどを進めていた。その後、災害時の浸水域に当たるとして、敷地全体を盛り土でかさ上げする計画に変更した。
3000平方メートル以上の盛り土は県条例に基づく許可が必要。事業者側は22年4月に県に申請し、6月に許可を得た。県によると、手続きや工法の安全性に問題はなく、工事の完了も確認したという。
付属施設を伴わない自立式パネルを設置する太陽光発電施設は建築物に当たらず、敷地造成の開発許可も不要とされるため、地元自治体は関与しにくい。
指針となるガイドラインや強制力のある条例を制定する市町村が増えており、同市も1月にガイドラインを策定。設置者に対し、行政との事前協議や住民説明会の実施、工事着手30日前までの届け出などを求めている。
今回、市環境課が造成を知ったのは住民要望の後。農業委員会など市内部で情報共有は行われず、県の情報提供もなかった。事業者は7月29日に「9月に工事着手」を届け出たが、工事はパネル設置を指すため、手続き的に問題はないという。
同市の小川伸朗市民生活部長は「地元の住民に不安を抱かせてしまったのは事実。事業者による住民説明も十分とは言えず、行政内部の対応にも課題があった。今後、情報共有を早い段階から進め、しっかり対応できるようにしたい」と話す。
「指針に沿って適切に進めている」
盛り土は最高点で約1・5メートルあり、区長は「生活道路や住宅に隣接しており、大雨などで土砂が流出しないか」と懸念する。説明会後、高さを下げる工事や土砂流出時の補償を求めて質問状を送付。事業者からは、許可を得て適切に行われ、安全性も向上▽計画変更の予定はない▽法令を順守して対応――と回答があった。区長は「住民の不安や疑問に応える内容ではなかった。見守りを続けたい」と話す。
毎日新聞社の取材に対し、事業者は「ガイドラインの趣旨に沿って適切に進めている」とした一方、行政との事前協議が十分だったかや、住民説明会を事前に開催しなかった点に関しては「個別の案件については回答を差し控える」とした。
市は「管理に問題が見つかれば適切に指導していく」としている。
県議会 合意形成義務化へ意見書
県議会は14日、太陽光発電施設の立地にあたって、住民説明会開催の義務化などの法整備を国に求める意見書を全会一致で可決した。施設建設を巡るトラブルが県内でも相次いでいることを受け、自民など全会派が共同提案した。
事業者が固定価格買い取り制度を利用する太陽光施設を建設するには、経産省の計画認定を受ける必要があるが、環境アセスの対象とならない場合、住民説明会などは義務づけられていない。
意見書は「再生可能エネルギーの利用促進は不可欠」としたうえで、不安を抱く住民と事業者の関係が悪化するなど、地域の理解を得て事業が適正に実施される仕組みが不十分だと指摘。(1)地域住民対象の事前説明会開催や、地域住民・地元自治体との合意形成を明確に義務づけるなどの法整備を図ること(2)法令を順守せず、安全や生活環境を損なう恐れのある場合は速やかに認定取り消しなどの措置を講ずること――を求めている。