パブ経営女性殺害 午後判決へ 遺族「罪認めて」記者会見詳報

大阪市北区のカラオケパブ「ごまちゃん」で昨年6月、オーナーの稲田真優子(まゆこ)さん=当時(25)=を殺害したとして、殺人罪に問われた元常連客の無職、宮本浩志被告(57)に対する裁判員裁判の判決が20日午後3時、大阪地裁(大寄淳裁判長)で言い渡される。求刑は無期懲役。公判では被告が起訴内容の認否を黙秘しつつ死刑を要望する一方、検察側の立証を「頼りない」と批判する場面すらあり、傍聴した遺族は怒りのあまりペンをへし折った。判決を前に、被告の最終意見陳述と結審後の遺族の記者会見をそれぞれ詳報する。
稲田さんの兄、雄介さん(30)は被害者参加制度を利用して傍聴を続けた。意見陳述の際は起訴内容の認否を黙秘する宮本被告に対し、真実を語ってほしいとの思いから「自分を押し殺して」頭を下げた。しかし、その後も被告の態度は変わらなかった。12日の論告求刑公判後に開いた記者会見では、やるせない心情を吐露した。会見での主な一問一答は次の通り。
--裁判の受け止めは
「言葉が出ないといいますか…。少しでも(被告に)気持ちが伝わればよかったのですが…。自分たちが求めていた答えが全くない。非常にむなしいというか、悲しい気持ちです」
《雄介さんは意見陳述の最後に椅子から立ち上がると、被告に向かって約10秒間頭を下げ、「これ以上、傷つけないでほしい。真優子を安らかに休ませてください」と述べた》
--なぜ頭を下げたのか
「自分も親も、お世話になった周りの方も(被告に)求めているのは罪を認めてほしいということ。そのために自分を押し殺して一度憎しみを捨てた。これ以上、亡くなった真優子のことを苦しめないでほしい。傷つけないでほしい。その思いからです」
《雄介さんの行動に対して、宮本被告は座ったまま一礼した。その後、最終意見陳述のために証言台に立った宮本被告は死刑判決を求めつつ、「第三者的な見解」として検察側の立証を批判した》
--被告の最終意見陳述を聞いてどう感じたか
「反省の弁もなければ、後悔もない、謝罪もない。居直って検察批判。間接的に自分はやっていないという抗弁。こんなやつに真優子が殺されたとなったら本当にやりきれない。法廷では被告との距離が数メートル。殴ってやろうと思えば殴れるけど何もできない。本当に悔しいです。もう言葉では言い表すことはできない」
《知人らによると、真優子さんは高校時代からアルバイトを掛け持ちし「家計を助けたい」と話していた。両親の誕生日には毎年プレゼントを贈り、交流サイト(SNS)に「父母元気、最高!」と投稿したこともあった。雄介さんと母親は法廷に足を運んだが、父親は末期がんのため参加できていない》
--父親に公判のことをいかに伝える
「できれば最低限の反省や償いの話を持って帰りたかったのですが、(現実は)そうではないので…。何も報告できないです」
怒りでペン折る
《宮本被告は最終意見陳述で、約50分にわたって持論を展開した。怒りをこらえて聞き続けた雄介さん。手にしていたペンは折れていた》
--無意識だったのか
「そうですね。被告が目の前にいるのに何もできない自分にすごくやりきれない気持ちで…。イライラして折ってしまいました」
《9月16日の初公判から宮本被告は不規則な言動を繰り返した。裁判長から名前や生年月日を聞かれても答えず、「これって何か意味ありますか。儀礼的なことだったら抜いてください」と告げた。その後も発言の機会があるたびに「死刑を望みます」と述べたが、起訴内容を黙秘する姿勢は変わらなかった》
--判決への期待は
「(被告は)居直って罪と向き合っていない。社会的制裁を受けて苦しみながら生活する。それが死ぬよりも一番苦しいことだと思うので、それを求めたいです。司法に対して、死刑とか無期懲役とか、懲役何年とか、そういった期待は全くないです」
《被告と遺族のやり取りをつぶさに見てきた裁判員は、どう判断するのか。判決は20日午後3時に言い渡される》