観光バス横転で乗客死亡 剛腕社長の“高級タワマン引っ越し”と“口コミサイトでの評判”

静岡県小山町の県道で、観光バスが横転して乗客1人が死亡した事故で、県警は10月13日、バスの運転手・野口祐太容疑者(26)を自動車運転死傷処罰法違反の疑いで現行犯逮捕した。
「亡くなった枝川恵美子さんの夫は、取材に『まだ震えが止まらなくて受け止められない』と心境を吐露しました。枝川さんはこれまで何度も、ツアーを主催した旅行大手『クラブツーリズム』を利用していたといいます」(社会部記者)
クラブツーリズムは、近畿日本ツーリストと同じく、KNT-CTホールディングス傘下の中核企業。売上高は200億円を超え、中高年向けの国内ツアーが主力だ。会員制度が充実し、リピーターも多いという。
「枝川さんの夫も『結婚から50年で、記念の旅行に行こうと話していた』と明かしました」(同前)
クラブツーリズムのツアー企画で、実際にバスの運行を担っていたのは、埼玉県飯能市に本社を置く「美杉観光バス」だ。
「野口容疑者が勾配の厳しい今回のルートを運転したのは初めてだった。『ブレーキが利かなかった』と供述していますが、フットブレーキの使い過ぎだった可能性が高い。技術に乏しい運転手に難ルートを任せた会社側の責任も指摘されています」(同前)
02年に設立された美杉観光。現社長の吉田典弘氏が企業規模を拡大させてきた。民間信用調査会社によれば、吉田氏が100%株主。コロナ禍前までは10億円を上回る売上高で推移していた。
口コミサイトでは運転の乱暴さがたびたび指摘
「剛腕社長の吉田氏は、クラブツーリズムなど旅行大手との取引も増やした。埼玉以外に東京、大阪、沖縄などにも営業所を拡大させました」(業界関係者)
吉田氏自身の暮らしぶりも豪華になっていく。18年、埼玉県入間郡から東京都目黒区の高級タワーマンションへと引っ越し。部屋は最上階の1つ下という高層階で、推定賃料は約60万円だった。さらに昨年元日付で、渋谷区の新築物件に自宅住所を移している。
だが、そんな生活とは裏腹にコロナ禍以降、経営は苦しくなっていった。昨年の売上高は前年比6割減の約4億円とされる。
そして、安全面も――。
「美杉観光は日本バス協会の安全性評価で『三ツ星』を獲得していたものの、実際には懸念の声が続出していました。口コミサイトでは運転の乱暴さがたびたび指摘されていた。今年8月には、点呼の記録義務違反で行政処分を受けたばかり。そうした中で運転手の労働環境は悪化し、安全教育も疎かになっていたとされます」(同前)
美杉観光のHPでは、現在も〈安全は全てに優先する〉との方針が掲げられている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年10月27日号)