同志社大生一気飲み死亡、遺族と和解 大学側の責任は認めず

同志社大(本部・京都市上京区)ダンスサークルの合宿で2016年、1年生の男子学生(当時19歳)が多量に一気飲みをして死亡したのは、大学が安全配慮義務を怠ったためだとして、遺族が大学に1000万円の賠償を求めた訴訟は24日、京都地裁(菊地浩明裁判長)で和解が成立した。遺族側によると、和解金の支払いはないが、大学側が弔意を示し、学生が「飲み会なくそう」などと訴えていたメッセージなどを大学のホームページに載せる内容での合意という。
死亡したのは山口怜伊(れい)さん。訴状などによると、合宿は16年2月22~26日、兵庫県内のホテルであり、山口さんら男女学生29人が参加。学生らは毎晩、飲み会を開き、深夜や翌朝まで一気飲みを繰り返していたという。
山口さんは25日、上級生らに「コール」と呼ばれる掛け声などで促され、ビールや焼酎を多量に一気飲み。深夜に意識を失い、翌朝に呼吸をしていない状態で発見され、急性アルコール中毒で死亡した。
山口さんの母親(53)は「飲酒を強要する危険行為が常態化しているのを認識しながら、大学は十分に指導せず放置した」として、21年4月に提訴。大学側は「大学の管理外で安全配慮義務は生じない」として、請求棄却を求めていた。
地裁は「飲酒の強要の事実があったと認める余地がある」とする一方、「大学及び顧問教員の責任が認められるとまでは言えない」として、22年9月に和解を勧告していた。
母親の代理人などによると、大学側が和解成立に合わせ、山口さんが合宿前に仲間に送っていた「飲み会なくそう」などのメッセージを含む広報文をホームページに載せ、山口さんへの弔意を示すことで合意した。謝罪や和解金の支払いはないという。飲み会に参加した学生らとは、京都簡裁で既に調停が成立している。
大学での飲酒事故では、熊本大医学部漕艇(そうてい)部で1999年、新入生歓迎会後に男子部員が死亡。飲み会に同席した部長の教授や学生ら8人に約1300万円の賠償を命じる判決が確定した。その後も全国で同様の事故が後を絶たないが、大学側の責任が認められるケースは少ない。
今回の訴訟の遺族側代理人、平田尚久弁護士によると、合宿自体を大学側が把握していない場合もあり、学外で起きた事故については、大学側の責任が認められにくいという。平田弁護士は「学外の行為に大学側がどこまで責任をとる必要があるかが明確になっていない」と指摘。「セクハラやパワハラと比べ、アルコールハラスメントに対する認識が大学には不足している。教職員がアルハラに対する知識を持ち、クラブ・サークル活動には一気飲み禁止の誓約書を提出させるなど、踏み込んだ対応が必要だ」と訴えている。
同志社大は「和解内容に従って近日中に弔意を表明する予定です」とコメントした。【中島怜子】