今年の文化勲章受章者が25日、発表され、歌舞伎俳優松本白鸚(80)が選ばれた。
白鸚は「身に余る栄誉です。びっくりしましたのと、大変うれしく思っております。この栄誉は1人ではできませんでした」と、関係各所、スタッフ、共演者、観客への感謝を述べた。妻に対しても「役者以外のことを全部やってくれた家内がいます。今にして思うと、よく高麗屋の女房になってくれました。本当に感謝しています」と話した。
8代目松本幸四郎の長男で、3歳で初舞台を踏んだ。81年に9代目幸四郎を襲名し、18年に2代目白鸚を襲名。歌舞伎界を代表する立役の1人として活躍している。
白鸚は「かれこれ80年近く役者を続けています。そう言うとかっこがいいんでございますが、それしかないんでございます」と笑い「役者は一生修業という信条を、心に念じてまいりました」と振り返った。
時代物、世話物など当たり役は数多いが、好きな役に「勧進帳」の弁慶を挙げ「自分の人生そのものが入っているような気がします」とした。
歌舞伎だけでなく、現代劇でも活躍してきた。ミュージカル「ラ・マンチャの男」は初演から半世紀以上単独主演している。「芝居には共通したものがあると実感しています。新しいものが生まれてくると信じてやってきて、今日のこの日がある」と自負を見せた。
文化勲章受章を、長女松本紀保、長男松本幸四郎、次女松たか子も喜んでいる。白鸚は「幸四郎は、『そりゃめでたい。こうでなくちゃいけません』と。意味分かりませんね(笑い)。紀保は『それはそれはおめでとうございます』と。たか子は『それはめでたい』とこれだけでした。一番男らしかった」と顔をほころばせた。
年内も歌舞伎の舞台が続き、来年4月には「ラ・マンチャの男」のファイナル公演が控えている。白鸚は「お客さまあっての芝居です。お客さまに喜んでいただける芝居を死ぬまで続けていきたい」と語った。