刑法の性犯罪規定の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会が24日に開かれ、法務省が、強制性交罪の成立に必要な要件などを改正する試案を示した。現在の「暴行・脅迫要件」に加え、幅広い行為や状況を列挙し、被害者側の意見を一定程度反映させた。時効の延長なども提案した。
現行法は強制性交罪と強制わいせつ罪の成立要件として「暴行または脅迫を用いる」と定めているが、被害者側は「暴行や脅迫がなくても体が動かず、被害に遭うことがある」として見直しを求めていた。
このため試案では暴行・脅迫に加え、「予想と異なる事態に直面させ、恐怖や驚がくさせる」「虐待による心理的反応を生じさせる」といった8種類の行為や状況を列挙。これらの行為で拒絶が困難になったことにつけ込み、性行為をした場合に処罰するとした。
法制審では教員らの性暴力を取り締まる罪の創設も論点となってきたが、試案では8種類の中に「経済的・社会的地位」を悪用することを明記し対応するとした。一方、被害者側が求めてきた、同意のない性行為自体を処罰する「不同意性交罪」の創設は提示しなかった。
試案は、精神的ショックなどで被害の申告をしにくい性犯罪の特性を踏まえ、時効の見直しにも言及。強制性交罪を現在の10年から15年にするなど各罪で5年延ばし、被害者が18歳未満の場合、18歳になるまでの期間を時効に加算するとした。
性行為への同意を自分の判断で出来るとみなす「性交同意年齢」は現在13歳となっているが、相手と5歳以上差がある場合は16歳に引き上げるとした。年齢差は同世代の交際は罰しないとの配慮から設けられた。
胸や尻などの性的部位や下着を盗撮したり、その画像を他人に提供したりする行為などを取り締まる罪の新設も提案。わいせつ目的で子供を手なずける行為(グルーミング)に対応する罪も新設するとした。
性交同意年齢 引き上げの方向
この日の部会では試案の説明後、暴行・脅迫要件や性交同意年齢の引き上げについて議論が交わされた。
法務省によると、要件として示された「拒絶困難」の文言について、「被害者側に拒絶義務が課せられるように受け止められかねない」などと懸念する意見が複数出たといい、表現を直すかどうかが検討課題となった。性交同意年齢はおおむね引き上げの方向で意見はまとまったという。
試案を基に今後さらに議論が進められるが、暴行・脅迫要件はどのような内容が妥当かで意見が割れており、最終的にまとまるまで曲折もあり得る。
性犯罪規定は、2017年7月施行の改正刑法で厳罰化が図られた。付則で施行後3年をめどに制度の見直しを検討すると定められたため、昨年10月から法制審で改めて議論が始まった。