厚生労働省は介護保険制度の見直しで、一定の所得がある高齢者の保険料を引き上げる一方、低所得の高齢者の保険料を引き下げる方向で検討する方針を固めた。高齢者の間で収入に応じて保険料を負担する「応能負担」を強化する。31日の社会保障審議会介護保険部会で議論を始め、年内に結論を得ることを目指す。
介護保険部会では、2024年度の制度改正に向けた議論が行われている。介護が必要な高齢者が増える中、生産年齢人口(15~64歳)は減少しており、給付と負担のあり方が焦点だ。
65歳以上の高齢者の介護保険料は市区町村ごとに基準額を決めており、現在の全国平均月額は6014円。個々の保険料は所得によって基準額の0・3~1・7倍に段階的に設定されるのが原則で、高所得者ほど多く負担する仕組みだ。
厚労省は今回の見直しで、低所得者の保険料の引き下げによる減収分を、高所得者の負担増による増収分で穴埋めすることを検討する。応能負担を強化して所得の再分配を進め、制度の持続可能性を高めたい考えだ。
厚労省は保険料引き上げの対象として、介護サービス利用時に3割の自己負担をしている「現役世代並み(単身で年収340万円以上など)」の所得がある高齢者などを想定している。一方、引き下げは19年10月の消費増税に伴う保険料の軽減措置がとられている年収80万円以下などの低所得者を想定している。
負担増、負担減となる所得の線引きや、保険料の見直し額については、今後の議論の中で詰める。