関西国際空港で、第1ターミナル(T1)の改修工事が進んでいる。平成6年の開港以来、最大規模となる改修。リニューアル第1弾として、10月26日には商業エリアを5倍に広げた新しい国内線エリアがオープンした。今後、2025年大阪・関西万博に向け、今回の目玉となる国際線エリアの拡充が本格化する。生まれ変わる関空は、上昇気流に乗れるか。
お土産充実
水際対策の段階的な緩和や全国旅行支援の追い風もあり旅客の回復が続く関空。11月初旬、リニューアルした国内線エリアは多くの旅行者でにぎわっていた。
大阪への旅行で訪れ、同エリアで買い物をしていた札幌市の大学生、松澤成さん(21)は「お土産が充実していてよかった。豚まんを家族のために買った」と笑顔をみせた。
新しい国内線エリアは、保安検査場で手荷物を載せたトレーが自動で動くスマートレーンを6台導入し、検査を円滑化。その先の商業エリアは230平方メートルから1110平方メートルに拡大し、搭乗までゆっくり買い物などを楽しむ空間に変えた。
高級感、地域性などテーマごとに3つのブースに分かれて商品を扱う土産物店や、アルコール類も充実させたカフェ、定番メニュー以外に30種類以上の全国のご当地グルメも楽しめるお好み焼き店など、幅広い店舗構成が特徴だ。
また、自動運転で目的の搭乗口まで移動する電動車いすを導入し、バリアフリーも進めた。
面積6割増
改修工事は4段階で進められ、国内線エリアのリニューアルは第1弾。最終目的は、国際線の受け入れ能力の拡大だ。
今回の国内線エリアは、ターミナル中央部に2カ所あった出発口を集約し南側に移設する形でオープン。空いたスペースは国際線の搭乗口に変え、国際線に利用可能な搭乗口が5つ増え39となった。
今後第2弾として令和5年冬を目指し、それまで国内線エリアがあった場所に新たな国際線エリアを整備。第3弾では大阪万博の開幕前にスマートレーンを増設した保安検査場などの運用を始め、最後に拡張した商業エリアをオープンさせる。国際線の出発エリアの面積は6割増となり、免税店などが充実する。
国際線の受け入れ能力の拡大は、近年の利用者増大にある。T1では平成29年度に年間2千万人を突破。開港時に想定していた処理能力(1200万人)の1・7倍に達した。大阪万博の誘致も進み対応が迫られたなか、同年に計画をまとめた。万博の開幕前には、関空全体で年間4千万人の受け入れが可能になる。
30年9月の台風21号による浸水被害もあり、災害対策も含め、投資額は総額1千億円規模になった。その後の新型コロナウイルスの影響で着工は予定から半年遅れの昨年6月となったものの、新国内線エリアの開業は当初の計画通りのタイミングとなった。
効率的に工事
「厳しいコロナ禍だが、空港運営と平行して行う改修工事にとっては、効率的に進められる要素となった」
こう語るのは、関空を運営する関西エアポートで設計・工事を担当したT1リノベーション部デザインチームマネージャー、佐藤浩之さん。コロナ禍で空港利用者が減少したことが、作業スピードのアップにつながったという。騒音を伴う作業は夜間に行う予定だったが、日中の作業も可能になったほか、工事用スペースも広く確保できた。
一方、関係者間の事前打ち合わせではコロナ禍ゆえの苦労もあった。リモート会議になったため、航空会社やCIQ(税関・出入国管理・検疫)を担う行政当局との意思疎通で難航することもあったという。佐藤さんは「図面上の認識が一致しなかったり、互いに発言のニュアンスが伝わりきらなかったりと、すり合わせが大変だった」と振り返る。
コロナ禍という想定外の事態もありながら、順調に進む改修工事。関空などの運用を官民で考える「関西3空港懇談会」が9月、今後関空の年間発着回数を現在の23万回から30万回と成田空港並みに引き上げる方針を決めるなど、側面支援も強まる。
関空の9月の旅客数は前年同月比約2・4倍の約65万人、そのうち国際線は約7・4倍の14万人となった。ただ、コロナ前の実績比では3割弱の水準にとどまっており、巨額投資の効果を十分に発揮するためには旅客の着実な取り込みが求められる。
佐藤さんは「これから利用者が戻ってくると思う。改修中であっても使いやすい空港となるよう、工事を進めていきたい」と力を込めた。(藤谷茂樹)