新型コロナウイルス禍で経営が悪化した医療・福祉施設への公的融資制度の仲介を装い、現金をだまし取るなどしたとして詐欺罪に問われた無職、渡部秀規被告(48)=大阪市中央区=は7日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)で開かれた初公判で起訴内容を認めた。事件を巡っては、大阪府寝屋川市議の吉羽美華被告(42)=同市=も詐欺罪で起訴されている。
両被告が悪用したとされるのは、厚生労働省所管の独立行政法人「福祉医療機構(WAM)」(本部・東京)が2020年2月に始めた、コロナ禍に対応する融資制度。医療・福祉施設の減収の程度に応じ、一定額まで無担保・無利子で借り入れができる。
検察側の冒頭陳述などによると、渡部被告は同年6月15日ごろに知り合いから、WAMの融資制度の申し込み手続きを代行していた医療コンサルタント会社に融資を希望する医療施設を紹介してほしい、などと依頼を受けた。渡部被告は施設を探すため、知人を介して知り合った吉羽被告に協力を求め、了解を得た。
その中で、渡部被告は会社関係者から、会社は融資額の5%ないし10%程度の手数料収入を得ており、施設側と合意できるならそれ以上の上乗せ分を被告の取り分としてよい、などと説明を受けた。
そこで、両被告らは施設に融資を勧める際、WAMに近い立場を装い、自分たちを通じて申し込めば満額の融資を確実に受けられるなどと説明することを計画。手数料は融資額の50%だが、融資金は返済しなくてよいなどとうそをつき、報酬を分け合うことにした。
7月には、渡部被告はWAMの審議官と偽り、融資を希望する堺市の福祉施設の関係者と、施設の事務所で面談。吉羽被告も市議と名乗って同席したという。
起訴状によると、渡部被告は20年7~12月、吉羽被告と共謀し、堺市の福祉施設にWAMから1億2000万円の融資を受けさせ、その半額に近い5940万円を仲介料名目で詐取したとしている。【平塚雄太】
吉羽被告、議員の信用性を悪用
新型コロナウイルス禍での公的融資制度を巡る一連の詐欺事件で起訴された渡部秀規被告の公判では、共犯とされる大阪府寝屋川市議、吉羽美華被告が議員への信用性を悪用し、積極的に関与してきたとみられる過程が明らかになった。
公判で示された証拠などによると、施設側に融資を勧誘する場で、吉羽被告は自ら市議であると名乗り「表のルートでは受けられない融資だ」などと強調。施設側には「融資額の約半分を政治的な資金として(吉羽被告らに)戻してくれれば、返済する必要はない」などとうそをついていた。
両被告らと共に逮捕され、後に不起訴処分となった男性は調書で「議員バッジは絶大な力があり、信用させるに十分過ぎた」と振り返った。同様に不起訴になった別の男性は手口について不安を抱いた際、吉羽被告から「大丈夫。私は法律を作る側の人間だ」などと説得されたと明かした。
一方、吉羽被告は調書で、返済義務がないという話を「自分も信用していた」などと主張しているという。【平塚雄太】