札幌市東区で納骨堂「御霊(みたま)堂元町」を経営する宗教法人・白鳳寺が実質的に経営破綻し、代表者が行方不明となっている。堂内に約1000体の遺骨が納められているが、10月下旬以降は施錠されて無人の状態となり、檀家(だんか)が遺骨を引き取れない事態となっている。【米山淳】
札幌市などによると、御霊堂元町は白鳳寺が2012年に開業した屋内型の納骨堂だ。納骨壇を使用できる権利を1区画30万~250万円で販売して、北海道内外から約1000体の遺骨を預かっていた。しかし、資金繰りが厳しくなったという。建物は債権者の葬儀会社(札幌市)が21年11月に差し押さえて、22年7月の強制競売で落札した不動産会社(札幌市)が所有者になった。
宗教法人は10月9~11日、檀家向けの説明会を開催。太田司代表は檀家に遺骨の引き取りを求めた。太田代表は「返金したくても、現金化できる資産がない」として、納骨檀使用料や永代供養料、年間管理費などの返金に応じない意向を伝えたという。
当初、10月24日に建物は不動産会社に引き渡される予定だったが、遺骨引き取りに時間を要するため、宗教法人と不動産会社は建物引き渡しの延期を札幌地裁に求めた。札幌地裁は建物引き渡しの強制執行日を11月21日に延長した。
一部の檀家は遺骨を引き取ったが、10月24日以降、納骨堂は全ての出入り口が施錠されたままになり、無人となった。檀家が太田代表と連絡が取れず、所在も分からなくなっているという。遺骨を引き取りに訪れた檀家が施設内に入れない状態となっている。
札幌市は閉鎖される前の10月21日、納骨堂への立ち入り調査を実施したが、墓地埋葬法の規定で義務づけられている財産目録などの財務資料一式が見当たらなかったという。調査に立ち会った太田代表は「(書類が)すぐに出てきません」と答えたといい、その場で職員が法律上の義務を守るように口頭指導した。また、強制競売が行われた7月以降も新規の納骨壇の販売を継続していたとみられ、9月に文書で販売しないように要請した。
残された遺骨の取り扱いはどうなるのか――。宗教法人は、引き渡し先の不動産会社と事業継続について協議。だが、市の条例は、納骨堂の運営について、宗教法人か地方自治体しかできない規定となっている。また、保管先を変更するために保管元が発行する収蔵証明書が必要となるが、札幌市は「施設が施錠されているため、遺骨の管理状況を把握できておらず、全ての契約者に収蔵証明書が用意されているのか分からない」と話す。
落札した札幌市の不動産会社の社長は7日、記者会見を開いた。「当初は納骨堂の跡地に新築マンションを建てる予定だった。利用者のことを考えると、存続できる道がないか考えていきたい」と話した。
◇
事態を重く見た札幌弁護士会消費者保護委員会は12日午後2時から、檀家向け説明会を開く。施設に残された遺骨の法的な位置付けや支払った使用料などについて弁護士が説明する。委員会によると、契約や遺骨に関する10件程度の相談が届いているという。説明会の参加は1家族2人までで事前申し込みは不要。契約書などの檀家と証明できる資料が必要となる。問い合わせは弁護士会事務局(011・281・2428)
これからどうすれば…
父親と夫の遺骨を引き取った札幌市東区の松田彰子さん(61)は「これからどうすればよいのか。父と夫に説明できない」と憤る。
松田さんは2015年、父の遺骨を御霊堂元町に納めた。21年3月に亡くなった夫も生前に「ここがよいな」と言っていたといい、21年5月に納めた。使用権と永代供養料などとして計320万円を支払ったという。納骨堂に対しては「お供え物もきちんと片付けてくれ、いつもきれいにしてくれていた」といい、当時は好印象を持っていた。
ところが、納骨堂から22年9月、1通の書類が届いた。土地や建物の名義が札幌市の不動産会社に変更されたため、10月に説明会を開くと書かれていた。説明会に足を運ぶと、「遺骨を引き取ってほしい。料金の返還はできない」と一方的に伝えられた。強制競売にかけられていたことも、この時に初めて知ったという。
納得はできなかったが、「大切な遺骨を置いておけない」との思いで引き取り、いまは自宅で保管する。「どうしてこのようなことになってしまったのか。せめて差額だけでも返金してほしい」と訴えている。だが、行方をくらました宗教法人の代表者に声は届かない。
御霊堂元町を巡る動き
2012年5月 札幌市が運営を認可
2021年11月 債権者の葬儀会社(札幌市)が建物を差し押さえ
2022年7月 札幌市の不動産会社が強制競売で落札
10月9~11日 運営する宗教法人が説明会で遺骨の引き取り要請と料金の返還に応じない意向
10月21日 札幌市が立ち入り調査。財産目録などの財務資料が見当たらず
10月24日 建物が施錠され、代表者と連絡が取れない状態になる
11月21日 建物引き渡しの強制執行予定日