「国税庁」をかたり、代金決済のプリペイドカード(電子マネー)を購入させ、金をだまし取る事件が今夏以降、福岡県内で発生している。県警は、若者も被害に遭いやすい新たな特殊詐欺の手口として、注意を呼びかけている。(横山潤)
「重要なお知らせ 必ずお読み下さい」。福岡市の20歳代男性のスマートフォンに9月末、国税庁を装ったショートメッセージが届いた。表示されたURLに接続すると、税金の未納と表示された。男性は記載された支払い方法に従ってプリペイドカード4万円分をコンビニエンスストアで購入し、コード番号を指定されたサイトに打ち込んだ。
男性は未納分の納付を終えたと思っていたが、その後、こうした税金の支払い方法がないことを知り、だまされたことに気付いた。すでにカードは、全額が使われていたという。
このカードは、コード番号がわかれば誰でもネット上で使える仕組みとなっている。県警は、詐欺グループがこれを悪用して偽物のサイトで番号を入手し、ネットの換金サイトなどで現金を得ているとみている。
男性は国税庁のサイトと誤信していたといい、県警に「国税庁と表示されたので税金の未払いがあると信じてしまった」と話したという。
県警によると、9月末までに県内で確認された特殊詐欺被害は239件(前年同期比21件増)、被害額は6億1750万円(同2億2816万円増)と前年同期を大きく上回る。幅広い世代で被害が出ており、県警は「(特殊詐欺は)高齢者の被害が多いと思われがちだが、若者も狙われている」と警鐘を鳴らす。
金融機関や自治体など、信頼高い職業名乗る
県警によると、今年上半期(1~6月)に県内で確認された特殊詐欺で詐欺グループがなりすました職業は、金融機関の職員が72件と最多で、自治体職員59件、警察官21件と続いた。
実在する企業や機関を名乗っているのが特徴で、県警は、被害者を信じ込ませるために社会的信頼が高い職業を名乗っているとみている。グループを摘発した際、警察の部署や警察官の名前をまとめたリストが押収されたケースもあった。
また、特殊詐欺の被害金の振込先に、外国人が開設した預貯金口座が悪用されたケースが約3割に上った。技能実習生や留学生が帰国する際に詐欺グループが口座を買い取っているとみられ、県警は「振込先に外国人の名前が表示されたら詐欺だと疑ってほしい」としている。