沖縄県恩納村の一般廃棄物最終処分場で昨年、圧力鍋の中から現金1600万円が見つかった。持ち主が現れず、発見者の男性3人が全額の引き渡しを求めて村を提訴。那覇地裁沖縄支部で発見者が600万円、村が1千万円を受け取る内容の和解が成立した。
発見者で原告の鉄筋工、宮城英和さん(44)は趣味の釣り道具に使えそうな部品などを探すため処分場に立ち入ることがあった。昨年5月16日は密閉できる容器を探していて、圧力鍋に入った銀行の封筒を発見した。中には1万円札がぎっしり。「子どものおもちゃか」とめくってみると本物だった。
一緒に訪れていた石川卓宏さん(50)、知花勝さん(38)と共に処分場にいた村の嘱託職員へ報告。職員が石川署へ通報し、現金を引き渡した。書類上、拾得者は「村」として処理された。
石川署の公告後も、現金の持ち主は現れなかった。遺失物法は拾得者が所有権を取得すると定めており、宮城さんには連絡がなかった。宮城さんは処分場の嘱託職員を通して村に確認して初めて、村が引き取る方針だと知った。
宮城さんらは1600万円の引き渡しを求め、ことし1月に村を提訴した。現金の所有権は処分場を所有し管理する村ではなく拾得者にあるとした。当時、処分場は個人が立ち入り廃棄物を持ち帰ることができたとも主張した。
一方、村は処分場への立ち入りは「関係者以外禁止」だったと反論。搬入された物は村の所有物で、仮に遺失物法の適用があるとしても「違法な立ち入りだ」と全額の引き取りを求めた。
裁判所から勧告を受け、8月23日に和解が成立した。
宮城さんら3人は今月5日、「コロナで困っている人たちのために使ってほしい」と、600万円から訴訟費用や税金などを差し引いた300万円を村社会福祉協議会へ寄付。村は、1千万円から訴訟費用を除いた全額を村の奨学金に組み入れた。