2019年4月に起きた池袋暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さん(36)をネット交流サービス(SNS)で中傷したなどとして、侮辱罪などに問われた愛知県扶桑町の無職、油利潤一被告(23)は16日、東京地裁(安永健次裁判官)で開かれた初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。一方、油利被告の弁護人は「松永さんを侮辱する意図はなかった」と述べた。
松永さんは閉廷後、東京地裁前で報道陣の取材に応じ、「投稿された時はつらくて、ネット中傷の恐ろしさを感じた。私は死を選ぶタイプではなかったが、命を絶つ人が出るかもしれない。誹謗(ひぼう)中傷が起きない社会になるための一助になりたい」と述べた。
事故で妻真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)を亡くした松永さんは、国に高齢ドライバーの事故対策などに関する要望書を提出するなど交通事故被害を減らすための活動をし、SNSでも積極的に発信している。起訴状によると、油利被告は今年3月11日、松永さんのツイッターアカウントに「金や反響目当てで、闘ってるようにしか見えませんでしたね」などと投稿し、松永さんを侮辱したとされる。
油利被告は今回の公判で、同8月に自身のツイッターアカウントに秋葉原で無差別殺傷事件を起こすことを示唆する内容の投稿をして、この地域を担当する警視庁万世橋署に警戒させたとして、偽計業務妨害罪にも問われている。【志村一也】