来年度から利用拡大
政府は、河川での不法行為や危険箇所の発見などを目的に行う河川巡視に、来年度からドローンを本格的に導入する方針を固めた。人の目で確認する「目視巡視」を段階的に減らし、河川管理の効率化と高度化を図る。年末に編成する2023年度予算案に関連経費を盛り込む。
現在の河川巡視は、主に国土交通省の委託を受けた業者の巡視員らがパトロール車で移動しながら河川の状態や利用状況を把握している。川岸や車が進入できない場所などでは、徒歩や船による巡視も実施する。
ただ、広大な河川を目視で見て回るのは、時間や労力がかかるほか、水位などの状況次第では、巡視員の安全が確保できない可能性もある。現在、ドローンの活用は一部が削られた護岸など一部にとどまり、目視による巡視だけの地域も少なくない。
12月5日の改正航空法の施行に伴い、住宅地や道路など有人地帯で操縦者の目が届く範囲を超えてドローンを飛ばす目視外飛行が可能となる「レベル4飛行」が解禁される。政府はこうした事情を踏まえ、来年度から河川巡視でのドローン活用を大幅に拡大する方針だ。具体的には、ドローンに搭載したカメラで河川や河川敷などの状況を撮影し、画像を人工知能(AI)で解析する。目視に比べ、堤防の損傷や土砂の移動、樹木の変化など詳細な情報が得られるほか、広範囲を見渡すことができるため、ゴミの不法投棄や危険箇所なども発見しやすくなることが期待される。
ドローンを使えば、巡視が短時間かつ少人数で済む利点もある。対象は、全国にある国管理の109水系の河川で、都道府県や市町村が管理する河川は対象としない。優先的にドローン巡視を開始する河川は今後詰める。
こうした巡視に加え、今後は河川上空を利用したドローンによる物流も活性化し、ドローンが河川上空を飛び交うことが想定される。このため、政府は23年度中に河川上空を飛行ルートとする場合のマニュアルを策定する方針だ。