「起訴相当」の関電歴代3社長、再び不起訴 大阪地検特捜部

関西電力の歴代幹部による金品受領や役員報酬補(ほてん)を巡る問題で、大阪地検特捜部は1日、大阪第2検察審査会(検審)が「起訴相当」と議決した八木誠前会長(73)ら歴代社長3人について、再捜査の結果、再び不起訴とした。告発していた市民団体が明らかにした。今後、検審が特捜部の判断が適切かどうかを改めて審査し、起訴すべきだと議決した場合、3人は強制起訴される。
また、「不起訴不当」と議決された旧経営陣6人も不起訴となった。この場合、検審が審査する制度はなく、6人の捜査は終結する。
関電の第三者委員会の報告書などによると、歴代幹部ら83人が、原発が立地する福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から計約3億7千万円相当の金品を受領。また、退任した役員18人に嘱託などの報酬として支払われた計約2億6千万円は、東日本大震災後、電気料金を値上げする際に、「身を切る」として減額した役員報酬を補するための不当な支出だったとする疑いが浮上した。
八木氏ら9人はこの問題で、原発関連工事で便宜を図る見返りに金品を受領したとする会社法の収賄や、役員報酬の補に対する同法の特別背任などの罪で市民団体から告発された。令和2年10月に告発状を受理した特捜部は1年にわたる捜査を行い、昨年11月、全員を嫌疑不十分で不起訴とした。
しかし、検審は今年7月、八木氏のほか、森詳介元会長(82)、岩根茂樹元社長(69)を、役員報酬や金品受領で生じた追加の納税分を補した問題について起訴相当と議決。検察に対し、強制捜査などを実施して「事実を明らかにしてほしい」と求めていた。
議決を受け、特捜部は旧経営陣らを再聴取。嘱託を決定した経緯や嘱託業務の実態などを詳細に調べたが、八木氏らが補のみを目的に不当な金額の報酬を支払ったとはいえず、公判での有罪立証は難しいと判断したとみられる。
関電金品受領問題
関電高浜原発がある福井県高浜町の建設会社が国税当局の税務調査を受けたのを機に、関電役員らが同町元助役、森山栄治氏(故人)から多額の金品を受領していたことが発覚。八木誠前会長や岩根茂樹元社長らが引責辞任した。第三者委員会は役員報酬補問題や、金品受領に絡む役員の追加納税分を関電が負担した問題も指摘。関電が旧経営陣に、個人株主は現旧経営陣らに損害賠償を求める訴訟を起こしている。