女性が家庭内暴力(DV)を受けているとして、医師が夫の同意を得ずに人工妊娠中絶手術を行ったことの是非が争われた訴訟の控訴審で、福岡高裁那覇支部は5日、1審判決を支持し、女性の説明だけで手術した医師の判断を妥当とする判決を言い渡した。
判決によると、女性は2017年、中絶を希望して病院を受診した。病院側は夫の同意を求めたが、女性はDV被害を訴え、夫の署名欄が白紙の同意書を提出。医師はそのまま中絶手術を実施した。
母体保護法は中絶には原則として本人と夫の同意が必要とするが、厚生労働省はDVがある場合には本人の同意だけでの手術を認める。夫はDVはなく、勝手に中絶されたとして、医師に200万円の損害賠償を求めて提訴。1審・那覇地裁沖縄支部は昨年11月、本人の説明からDVがあったと認め、夫の同意なしに手術した医師の判断を適法として訴えを退けていた。
夫側は控訴審で「本人の説明だけでは不十分」と訴えたが、谷口豊裁判長はこの日の判決で、母体保護法で医師に特段の調査権限が与えられていないことを踏まえ、「事実関係の確認方法には限界があり、本人の説明を信用したことは不合理とはいえない」とした。
判決後の記者会見で、医師側の代理人弁護士は「患者との信頼関係で成り立つ医師の立場に配慮した判決だ」と評価した。