小池百合子知事の東京都が、新築戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化を進めている件で、エネルギー政策研究の第一人者であるキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹らは6日、都庁で反対する記者会見を開き、知事室に署名を提出した。太陽光パネルについては、維持費用や廃棄コスト、災害時の危険といった問題に加え、大半が中国製のため「人権問題」という視点が注目されている。
「中国当局による新彊ウイグル自治区での人権弾圧を、欧米の先進国は日本より問題視している。都は(太陽光パネルと)人権問題の関係が発覚したらどうするのか」「拙速なうえ、あまりに問題点が多い」「義務化はやるべきではない」
杉山氏はこう語った。会見には、環境問題に詳しい東京大学公共政策大学院の有馬純教授や、地域政党「自由を守る会」代表の上田令子都議らも参加した。終了後は、5000人以上の反対署名を知事室に届けた。
太陽光パネルには、多くの問題点が指摘されているが、最大のネックは「中国の人権弾圧」との関係だ。
杉山氏は「世界の太陽光パネルの生産は約8割が中国製で、うち約6割がウイグルと関係している」という。パネルの主要部材の製造で、ウイグル人の強制労働や人権侵害の疑いが懸念されている。
米国はこのため、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)で、ウイグルで生産された部品や原材料を使った製品の輸入を事実上禁止している。
亡命ウイグル人による民族団体「世界ウイグル会議」のドルクン・エイサ総裁も5日、都内で開いた記者会見で、「(東京都の義務化で中国製パネルが使用されれば)ジェノサイド(民族大量虐殺)に加担することになる」「中国製以外を使用すべきだ」と訴えた。
環境的な疑問がある。
前出の有馬教授は「都内にパネルを敷き詰めても温暖化防止の効果はないに等しいが、電力コストは必ず上がる。日本の産業に重い負担になり、雇用や経済に影響が出てくる」「都の義務化で、最も漁夫の利を得るのは中国。安全保障上の脅威である中国に利をもたらすような政策を強制的に進めていいのか」と懸念を示した。
一方、推進する小池知事は1日、都議会第4回定例会の所信表明で、「2030年のカーボンハーフ(温室効果ガス排出量半減)を確かなものにする」などと意気込んだ。
東京大学大学院の前真之准教授らも6日、別の記者会見を開き、電気代が高騰する現状では「(太陽光パネルの設置)義務化は有効な手段」などと主張した。