東京・池袋の高層ビル「サンシャイン60」の飲食店で準暴力団「チャイニーズドラゴン」のメンバーらが乱闘になった事件で、警視庁暴力団対策課は7日、同組織のリーダー格の一人で、中国籍の姜海鋒容疑者(51)=東京都台東区=ら5人を威力業務妨害と建造物侵入の容疑で逮捕した。他のメンバーら約100人が貸し切りにして飲食していたところ、姜容疑者らが店に乗り込んで殴り合いが始まったとみられる。同課は乱闘になった詳しい経緯を調べている。
逮捕容疑は10月16日午後6時半ごろ、同ビル58階のフランス料理店に侵入し、客として訪れていた他のメンバーに殴りかかり、皿やビール瓶などを店内で投げつけて店の業務を妨害したなどとしている。姜容疑者は「行ったことは間違いないが、乱闘になったのは本意ではない」と一部否認しているという。
同課によると、この日は午後6時ごろから、懲役刑を終えたチャイニーズドラゴンの元リーダーの「出所祝い」で宴会が開かれていた。ビル内の防犯カメラには、宴会が始まった約20分後に姜容疑者ら約20人が店に向かう様子が映っていた。間もなくしてケンカが始まり、10人以上の乱闘になったとみられる。
捜査関係者によると、姜容疑者はチャイニーズドラゴンの上野地区で活動するグループのリーダー。宴会には別の地区のグループの幹部やメンバーが集まっていたが、姜容疑者は宴会に招待されておらず、そのことが乱闘のきっかけになった可能性があるという。
乱闘により、店は壁などが破壊され、修理のために5日間営業できなかった。
捜査幹部「暴力団よりもたちが悪く、凶悪化」
「チャイニーズドラゴン」など準暴力団が関与する事件は後を絶たない。警察庁は準暴力団を「常習的に暴力的な不法行為を行う集団」と位置づけるが、山口組や住吉会などといった「指定暴力団」との認定はしておらず、暴力団対策法の対象外となっている。厳しい取り締まりは困難な現状にある。
準暴力団は、東京都内ではチャイニーズドラゴンのほか、暴走族である「関東連合」や「大田連合」「打越スペクター」の各OBグループがある。ただ、いずれも暴力団のように明確な組織構成や指揮系統がなく、メンバー同士のつながりも流動的なため、警察当局は組織の規模や実態などを明確に把握できていない。
準暴力団のうち、特に警視庁が警戒を強めているのは、中国残留孤児の子や孫を中心に結成されたチャイニーズドラゴンだ。捜査関係者によると、都内の複数の地域にグループが存在するとみられ、東京以外にもメンバーがいるとみられている。
準暴力団は暴力団と同様に、飲食店からのみかじめ料や覚醒剤売買、特殊詐欺などの犯罪収益を資金源としており、暴力団組員とのつながりがあるメンバーも多い。そのため、暴対法などで締め付けられた暴力団が、規制の網をかいくぐるために準暴力団を利用していると指摘もある。
捜査幹部は準暴力団について「実態は指定暴力団となんら変わらない。それなのに暴対法や暴力団排除条例の網にかからないため、現状では暴力団よりもたちが悪く、凶悪化している」と明かす。その上で「グレーゾーンとなっている準暴力団をどう取り締まっていくか。全国規模で検討しなければならない」と強調する。
長年、暴力団排除に携わってきた斎藤理英弁護士は「暴力団と準暴力団は持ちつ持たれつの関係になっている。離合集散を繰り返す準暴力団の実態解明を急ぐとともに、暴力団とのつながりを明らかにし、両者の責任を追及できる法律の制定が必要だ」と指摘した。