映画などの著作物を無断で編集、公開する行為には巨額の賠償責任が課せられる、という司法の警告が発せられた。ネット上の違法配信に対する抑止力となるだろう。
長編映画を10分程度に短縮した「ファスト映画」を作成して動画投稿サイトに投稿した男女2人に対し、東京地裁は、映画会社やテレビ局など原告側の請求通り、著作権侵害による計5億円の賠償を命じる判決を言い渡した。
2人は2020年、東宝や松竹、東映など13社がそれぞれ著作権を持つ計54作品のファスト映画を無断で公開していた。再生回数は1000万回を超え、約700万円の広告収入を得ていたという。
原告側は、損害額について「1回の再生あたり200円、総額20億円」と算定し、「最低限の損害回復」として5億円の支払いを求めていた。判決はこれらの主張を全面的に認めた。
ファスト映画の賠償額を巡る司法判断は初めてで、今後のモデルケースになる可能性がある。再犯を抑止し、著作権の適正な保護につなげることが期待される。
2人は刑事裁判でも執行猶予付きの有罪判決が確定している。広告収入目当てで違法動画を配信している人は、とてつもない代償を払うことを肝に銘じるべきだ。
業界側の厳しい対応で、日本映画を編集したファスト映画は急減しているが、漫画の海賊版サイトの被害は今もなお深刻だ。
出版社は監視を強化し、海賊版運営者らに対する損害賠償請求訴訟にも力を入れている。文化庁は、賠償を高額にできるよう、損害額の計算方法を見直す方向で、著作権法改正を検討している。
課題は、海外を拠点とする海賊版サイトの取り締まりだ。運営者の特定は容易でなく、日本側の監視が甘いという評判も根強い。
こうした中、中国当局は6月、日本の漫画を無断で配信していた中国人に罰金刑を下した。日本人向けの海賊版サイト運営者が海外で処分されたのは初めてで、日本側の情報提供が生きたという。
10月には日本の業界団体がスペインのオンライン広告会社に働きかけて、海賊版サイトへの広告出稿を止めさせた。
国境を越えた違法行為にも日本は積極的に対処するという方針を国際的に広く周知させたい。
見る側の責任も問われる。安易な閲覧は違法配信を助長し、出版社や映画会社の収益構造を破壊する。自らが罪に問われる場合もあることを忘れてはならない。