140時間以上の拘束 「異常だ」OBも首かしげ 岡崎署勾留死

愛知県警岡崎署(同県岡崎市)の留置場で無職男性(43)が勾留中に死亡した問題で、県警は署員らの対応に違法性が疑われるとして、同署に対する強制捜査に乗り出した。署は当初、病死の疑いと発表したが、複数の署員による男性への暴行や持病があるのに薬を与えなかったことなどが次々と判明。身体拘束は延べ140時間以上に及び、県警関係者からも「これほど長時間の拘束はあり得ない」と指摘されている。
身体拘束
男性は11月25日に公務執行妨害容疑で逮捕された。留置場で暴れるなどしたため、ベルト手錠や捕縄といった「戒具」で手足を拘束され、保護室に隔離されていた。男性は自ら服を脱いだとされ、裸の状態で戒具を着けられていた。
県警関係者によると、男性は約30時間にわたって拘束された後、「もう暴れない」などと話したため、いったん戒具を外されたが、食事をした後に再び暴れ出したため拘束された。拘束時間は今月4日未明に男性が死亡するまで延べ140時間以上に上った。
関係署員は調査に対し「(上司の)指示がなかったため外せなかった」と説明しているという。ある県警OBは「一人の人間の身体を拘束する責任感が当事者にあったのか。140時間以上の戒具の使用は異常だ」と首をかしげる。
署員が暴行か
保護室に設置された監視カメラには、幹部を含む複数の署員が暴行を加える様子が映っていた。県警はカメラ映像を確認するなどして、身体拘束され横たわった状態の男性に対する署員の行為が刑法上の暴行に当たるか調べている。
また、男性は後頭部が便器に入った状態で放置され、署員がそのまま水を流していたことも判明。手足を縛られてトイレを思うように使えないなど、劣悪な環境に置かれていたとみられる。この間、入浴もできなかったという。
医療的措置を怠る
男性には軽度の糖尿病と統合失調症の持病があった。署は糖尿病に関し、医師の診察を受けさせるなど医療的な措置を怠っていた。男性は食事を拒むようになり、約5日間食べ物を口にしていなかったが、署は栄養補給などの措置も取っていなかったという。
男性の父親(71)は逮捕3日後の11月28日、署員から男性が暴れ、食事も取ってないと伝えられた際、「息子には精神疾患があり、落ち着かせるため鎮静剤を打ち、病院で治療を受けさせてほしい」と求めたが、署はすぐに対応しなかった。その後、精神保健福祉法に基づく措置入院の手続きを進めていたが、結果的に間に合わなかった。
署員らの一連の対応について、近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「男性の健康状態への配慮が足りなかったと思う。専門家の意見を聞いていれば、早期の入院など別の対応を取ることもできたのではないか」と語った。さらに「(留置管理の担当者は)人の命を預かるという意識が求められる。誰が担当しても適切な措置を講じられるようなマニュアルを作る必要がある」と指摘した。
県警は16日、署員による一連の行為が「刑罰法令に触れる可能性が認められた」として、刑事部長をトップとする約40人の捜査態勢を確立。特別公務員暴行陵虐容疑で岡崎署を家宅捜索した。押収資料を精査するとともに、関係した署員らから事情を聴くなどして、実態解明を進めている。【森田采花、熊谷佐和子】