厚生労働省は、宗教2世の虐待対応指針の作成にあたり、信者の子どもたちから苛烈な虐待体験をヒアリングしてきた。宗教を理由に支援を受けられずにきた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の2世らは「指針を活用し、今まさに苦しんでいる子どもたちを救ってほしい」と訴える。(坂本早希、都梅真梨子)
中国地方に住む30歳代女性は、両親が旧統一教会の信者で、幼い頃から虐待被害を受けてきた。
教団への多額の寄付で家計は苦しく、宗教活動に熱心な両親は家を空けることが多かった。食事も満足に用意してもらえず、虫が混入したくず米に、みそやかつお節をのせて飢えをしのいだ。小学校時代はクラスで一番小柄で、いつも同じ汚れた服で登校していた。
そんな女性に救いの手を差し伸べてくれる大人はほとんどいなかった。栄養失調を心配する教員も中にはいたが、学校側が両親と話し合いの場を設けてくれることはなかった。
宗教活動への参加の強制も絶えず、北海道や韓国に急に連れて行かれた。空港で「友達と約束があるから行きたくない」と泣いても、父親に頬をたたかれ、無理やり飛行機に乗せられたこともあった。
虐待のつらい記憶は今も深く残り、父親とは高校卒業以降、連絡を取っていない。昨年、子どもにも恵まれたが、今後も会わせるつもりはない。今年に入り、教団の高額寄付問題に注目が集まると、女性は国会などで宗教2世の幼少期の実態を訴えるようになった。女性は「子どもは自分の置かれた環境が当たり前だと思いがちで、私も声を上げられなかった」と振り返る。「周囲は『信者の子だから』と見て見ぬふりをして助けてくれなかった。行政は
躊躇
(ちゅうちょ)せずに子どもを保護してほしい」とし、厚労省側にもこうした思いを伝えているという。
旧統一教会とは別の宗教団体の宗教2世として育った関東地方の30歳代男性は、厚労省のヒアリングに応じた。
厳しい教義で知られる宗教団体で、男性は母親から「信仰を持ち、宗教活動を行わなければ死ぬ」と繰り返し言われてきた。教義ではしつけのためなら子どもをムチで打ってもよいとされ、教団の集会中に居眠りをしてしまった小学生の時には、電気コードで尻を何度もたたかれた。教義以外をたたえることは禁じられ、小学校では担任教員に「僕は校歌が歌えません」と伝えるよう強要された。
男性は「学校という環境で人と違うことを強制されるのは苦痛だった」と振り返り、「子どもにとって最も近い世界である学校で、まず異変に気付く必要がある。国には、指針を活用した学校職員への研修も併せて進めてほしい」と訴える。
宗教行事参加 「強要」8割超
一般社団法人・社会調査支援機構チキラボが宗教2世(3世以降を含む)を対象に9月にネット上で行ったアンケート調査(回答数1131人)では、家族から宗教行事への参加を強要された人は全体の8割を超えた。6~12歳の小学校時代が特に多く、女性は年齢が上がっても強要され続ける傾向がみられた。
信仰を理由とした「恋愛・交友の制限」は34%、「学業や就業の制限」は24%の人が経験していた。体罰を受けたことがあるのは25%だった。調査に協力した2世からは「読経をしなかったら、夏場にクーラーも扇風機もない部屋に閉じ込められた」「親の言うことを聞かないと真冬に水をかけられ、食事を抜かれた。体罰を受けないようにビクビクしながら生活していた」などの声が寄せられたという。