政府が中国本土からの入国者に限定して新型コロナウイルスの水際対策を再強化するのは、中国当局が発表する感染者数などの情報に疑念が拭えないためだ。ウイルスの流入を防ぐとともに、入国者の検査とゲノム解析を通じ、中国で流行するウイルスの実態を解明する狙いもある。
食い違い
「中央と地方、政府と民間の感染情報が大きく食い違っている」
岸田首相は27日、首相官邸で記者団にこう述べ、中国政府が公表する情報への疑念を隠さなかった。
日本国内では、オミクロン株の系統「BA・5」が主流だ。中国ではBA・5から派生した「BF・7」が流行しているとされるが、新たな変異株出現の可能性も含め、実態は明らかになっていない。
政府は、過去7日以内に中国本土に滞在歴のある入国者全員にウイルス検査を行うとともに、ウイルスの遺伝情報を調べるゲノム解析を実施する。これにより、危険性の高いウイルスが中国に出現していないかどうかを調べ、日本に流入するリスクの低減を図る。
水際対策の強化は、中国の感染状況が落ち着き、実態がある程度明らかになるまで続ける方針だ。首相周辺は「WHO(世界保健機関)が調査しないなら隣国の日本が独自に調べる必要がある」と述べた。
不透明
中国は国家衛生健康委員会が14日、感染者の大半を占める無症状感染者数の発表を取りやめるなど、当局が公表する感染情報は不透明な部分が多い。
浙江省は25日、新規感染者が1日当たり100万人を超えていると発表しており、中国各地で感染が拡大しているのは確実だ。だが、中国疾病予防コントロールセンターが公表した25日の新規感染者は全国で2668人にとどまった。23日には香港紙が、今月の累計感染者数が2億4800万人に上った可能性があると報じたものの、当局の発表では、1~22日の感染者数は30万人ほどだった。
WHOのテドロス・アダノム事務局長は21日の記者会見で、中国での感染爆発が新たな変異株を生む懸念などから「より詳細な情報」の公開を求めた。
訪日客
中国が海外渡航を制限してきたことから、現時点では中国からの入国者数はコロナ禍前にほど遠い。2019年の訪日客3188万人のうち、中国からの入国者は3割を占め、訪日消費のかぎを握っていた。
今回の水際対策強化では陰性の人には隔離なしに入国を認め、入国者数の上限も設けない。ただ、政府は中国からの直行便の増便は当面は認めない方針のため、水際対策の強化が長期化すれば、中国が来年1月に海外旅行を解禁しても訪日客が大幅に増えるかどうかは見通せない。