首相「増税前選挙」発言に波紋、周辺が火消し…自民幹部「解散するにしても来年は早すぎる」

岸田首相が防衛費増額に伴う増税を行う前に、衆院選が行われるとの認識を示したことが波紋を呼んでいる。首相が来年中の衆院解散・総選挙に踏み切るとの臆測が広がったためだ。首相周辺は火消しに躍起で、「首相の専権事項」である解散の選択肢を狭めることは避けたい考えだ。
安倍派の動き、警戒感

首相の発言は、27日のBS―TBSの番組で出た。増税を巡り、「国民に負担をお願いするのは『2024年以降の適切な時期』で、27年までの間だ。スタート時期はこれから決定するが、それまでには選挙はあると思う」と言及した。
16日に決定された与党税制改正大綱では、法人、所得、たばこの3税を「24年以降の適切な時期」に段階的に増税し、27年度に計1兆円強を確保する方針が明記された。
衆院議員の任期満了は25年10月だが、首相の発言は、最も早い24年に増税が始まるのであれば、来年中にも衆院を解散する可能性があると受け止められた。
ただ、首相周辺は首相の発言について、「本人としては任期満了前に選挙があるという一般論を語ったにすぎない」と解説する。与党内では、本格的な増税は25年以降になるとの見方があり、自民党幹部も「増税で解散するにしても、来年は早すぎる」と指摘した。
首相は軌道修正を指示し、政府高官は28日、首相官邸内で記者団を集め、「増税前の選挙も、日程上の可能性としてあり得ると言っただけだ」と沈静化を図った。木原誠二官房副長官も同日のテレビ番組で「重大な決定をする時、手前で国民に判断いただくこともあるし、決定後もありうる。首相が判断する」と強調した。

そもそものきっかけは、増税に慎重な自民党安倍派の萩生田政調会長が25日のテレビ番組で、「7月の参院選で増税は約束していない。明確な方向性が出た時には国民に判断いただく必要も当然ある」と述べ、増税前の衆院解散を求めたことだった。
これに対し、松野官房長官は26日の記者会見で、「防衛力強化の内容、予算、財源を年末に決める方針は(今年1月召集の)通常国会から言ってきた」と反論した。
首相の増税方針を巡っては、安倍派の世耕弘成・参院幹事長や西村経済産業相らも異論を唱えた。安倍派は安倍晋三・元首相が亡くなった後、衆目の一致する後継候補がおらず、新たな会長を決められない事態に陥っている。自民内では、萩生田氏の発言について、「派内で『反増税派』の支持を集めるのが狙いだ」と見る向きもある。
首相は27日に面会した自民幹部に対し、萩生田氏の動きについて、「派閥の中でも勢力争いがあるからな」との感想を漏らした。首相が率いる岸田派からは「来年は安倍派から増税を巡り、首相への攻撃が増えそうだ」との警戒感が出ている。