天皇皇后両陛下は、2022年9月19日、英国のエリザベス女王の国葬に出席された。陛下が王室や元首の葬儀に参列することは、皇室の慣例からすると異例のことだったが、英国からの招待に快諾なさったといわれた。
日本の皇室と英国王室の関係は深い。天皇即位後の翌年(令和2年・2020年)には、両陛下となって初めての外国訪問先を英国に予定していたが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。
陛下は、雅子妃殿下(当時)がご懐妊なさった時に、エリザベス女王やチャールズ皇太子から温かいお祝いの言葉を受けたことがあり、英国での再会を楽しみになさっていたといわれたが、叶わないままだった。
英国王室は、日本の皇室が最も影響を受けたヨーロッパの王室
英国王室は、日本の皇室が最も影響を受けたヨーロッパの王室と言われる。昭和天皇、上皇陛下から、天皇陛下へと三代に渡り受け継がれてきた関係で、エリザベス女王の国葬での各国王室参列者席の六列目という順位からも、親交の深さが感じられた。
陛下は皇太子時代に英国のオックスフォード大学マートン・カレッジで2年間の留学を経験したこともある。世界の若者と交流しながら協調と平和友好を学んだ思い出の地でもあった。
「エリザベス女王とは、バッキンガム宮殿でのお茶会のほか、バルモラル城ではバーベキューや、女王が運転する車でドライブするなど、家族のように過ごされたそうです」(宮内記者)
皇后も皇太子妃となる前の勤務先の外務省の研修留学で、オックスフォード大学で学ばれた。同時にお妃候補としてもいち早く名前が挙がっていて、マスコミから追い回されるという一幕まであった。だが英国で苦労しながら学ばれたことで、意志を貫かれる強さを身に付けられたともいわれた。
愛子内親王殿下も初めての留学先として英国を選ばれた。学習院女子高等学校2年生の短期プログラムでイートン・カレッジに学んだ。
「天皇ご一家にとって、英国の地で学ばれた多くのことは、今でも精神的に大きな支えとなっていると言っても間違いないのではないでしょうか」(陛下のご学友)
陛下は当初からご夫妻で国葬に参列する意向を強くお持ちだといわれた。ただ、皇后が英国行き2泊4日という強行スケジュールをこなし、帰国後に控えていた「第77回国民体育大会」(栃木県で10月1日から開催)へ約3年ぶりに出席できるかが心配された。
皇后の体調は落ち着いているといわれたが、押し迫った出発日程までにお気持ちを整えられるか――。
「療養中の雅子さまにとって制限時間内まで積み木を慎重に積み重ねていた矢先に、新しい積み木を増やして精神的なバランスを取らなくてはならなかった。そうした新しい整え方を迫られたことには、ご苦労なさったのではないでしょうか」(宮内庁関係者)
国葬のみ出席は出発前に決定
現地では、国葬前日のチャールズ国王が主催するレセプションも予定されていたが、宮内庁は出発前に皇后の体調を鑑みて、国葬のみのご出席ということを決めたという。そのため同行する医師は侍医だけで、主治医の精神科医は行かなかったのではないか、といわれた。
それだけ体調は安定しているのかと思われたが、英国への出発当日、御所で愛子さまに見送られる皇后の表情は笑顔が見られたものの、羽田空港から政府専用機のタラップを上るお姿は、少し緊張されたご様子だった。
英国到着後も皇后の表情にお疲れが見られたことから、宮内庁職員は当時を振り返る。 「当初からレセプションはご欠席されて、葬儀だけのご出席ということだったので、到着の翌日は静かに休んでいただいて、強い気持ちで国葬に参列されました」
日本時間の午後8時15分。御所では愛子さまがテレビで国葬の生中継を食い入るようにご覧になっていたという。両陛下のお姿を映像でご確認なさろうとしたが、最後まで見つけられずに残念がられたというが、エリザベス女王の棺の上に置かれた王冠や、男性王族が持っていた錫杖にもご関心を示されたといわれた。
愛子さまにとって、久しぶりにお一人で過ごされた時間だったが、皇后の体調を終始案じていらっしゃったという。
国葬後、両陛下はレセプションにご出席された。マレーシア国王夫妻やトンガ王国、アジア諸国の代表と交流され、会場に少しでも長くいて、女王陛下を偲ばれることを望んだそうだ。
20日、国葬を終えてロンドン郊外のスタンステッド空港から政府専用機で日本に帰国される皇后の表情は、安堵なさっているように見え、関係者らに笑顔を見せられていた。
2023年、皇室は…
この1年も両陛下の公務はオンラインが大半だったことから、国民と直接触れ合うことができる地方公務へのおでましが期待される。前述した「第77回国民体育大会」は当初、1泊2日の日程で国体の競技などをご覧になる予定だったが、皇后が海外訪問を終えたばかりということもあり、日帰りに変更された。
両陛下はご自分たちが移動をなさることで、国民の人流などに影響を及ぼし、新型コロナ感染者を増やしてはいけないと常に考えられてきた。夏の静養も取り止められたり、愛子さまが大学の講義の大半をオンラインで受け続けるのも、そうした理由からだった。
宮内庁の職員や皇族方にも感染者が出たこともあり、より慎重に感染者を増やさない、出さないことを強く望まれている。コロナとの徹底した向き合い方にも天皇家の姿勢が見えるようだった。
一刻も早くコロナ禍を乗り越えて、国民と手と手を取り合える地方公務の再開が望まれる2023年となるだろう。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2023年の論点100 』に掲載されています。
(友納 尚子/ノンフィクション出版)