節目は18歳か20歳か 変わる“成人式”、失った「20歳の根拠」

9日は、成人年齢を18歳に引き下げる改正民法の施行から初の「成人の日」となった。7日からの3連休では、多くの自治体が「成人式」を「二十歳を祝う会」などに名称を変え、従来通り20歳を対象に式典を開催した。一方で対象年齢を引き下げた自治体もある。成人を祝う節目は18歳か20歳か――。専門家からは「20歳を対象とする根拠がなくなり、式典そのものの目的があいまいになる」との指摘も上がる。
式の名称変更、対象を引き下げ…
「『大人』の実感はまだ湧かないが、できることが多くなるのがうれしい。ただ『成人式』という名前でやりたかった」。9日に福岡市博多区のマリンメッセ福岡であった「はたちのつどい」に参加した大学2年の豊田綾愛里(あえり)さん(20)は話す。成人年齢の引き下げで、2歳下の弟も成人になったが「20歳の節目で式典をやるのがいいと思う」と語った。一方で参加者の中には「選挙権が与えられる18歳でやるのもあり」「受験などがある18歳は大変。立場や環境が変わる19歳でやるのがいいのでは」という声も聞かれた。
市が2019、20年に市民1万人を対象に実施した成人式に関するアンケートでは、6割以上が対象年齢を「20歳になる学年が望ましい」と回答した。「18歳は大学入試や就職活動などの時期と重なり忙しい」「これまで20歳を対象としていたから」などの意見が寄せられたという。担当者は「来年以降も20歳を対象にする予定」とする。
20歳だった成人年齢を18歳にする改正民法は22年4月に施行された。引き下げを見据えた検討段階では成人式の扱いも課題になったが、政府は自治体に対応を委ねた。法務省などによると、全国の大多数の自治体は、従来通り20歳を式典の対象にしている。
対象年齢を引き下げる自治体もある。
宮崎県美郷町は「卒業や門出を迎え、各種の権利や義務が発生する18歳に自覚や責任感、心構えを促す」として、成人式の対象を18歳に変更した。受験や就職活動などに影響が出ないよう、例年は1月3日の式典を22年8月に開催。担当者は「『他の自治体と足並みをそろえた方がいい』という声もあったが、大きな反対や混乱はなかった」と振り返る。移行に伴い、22年度中に19歳や20歳になる人が対象の式典は23年1月3日に開いた。
大分県国東市や三重県伊賀市も、対象年齢を引き下げた上で、式典に参加しやすいよう、対象者が18歳になった翌年度の大型連休中に開くことにした。ただ、伊賀市の担当者は「自治体で対象年齢が異なると、転居した場合に2度参加する人や一度も参加できない人が出てきかねない」と危惧し「国の一律の指針があった方がよかったのではないか」とこぼす。
混乱が生じた自治体もある。北海道別海町はいったん18歳に引き下げる方針を示したが、住民アンケートで反対意見が8割に上ったため22年12月に急きょ方針を撤回し、従来通り20歳を対象とした。移行期として、既に開催が決まっていた19歳対象の式典は7日に実施した。担当者は「町民の皆さんを混乱させてしまったが、成人とは何なのか改めて考えるきっかけにもなった」と話す。
「公費で開催、目的を明確に」
今後も多くの自治体で20歳を対象に続きそうな式典だが、問題視する専門家もいる。田中治彦・上智大名誉教授(社会教育学)は「民法や公職選挙法、労働基準法など300以上の法令が成人を18歳とする一方、20歳を根拠とするのは少年法、酒、たばこ、公営ギャンブル関連などわずかだ。成人式は1948年に『成人の日』が制定されて全国に広がったが、歴史的に20歳に重きを置く風習はなく、『20歳を祝う会』は法的にも民俗学的にも根拠がない」と指摘。「成人式の目的は成人になったことを祝福するとともに、義務や権利を伝え自覚を促すこと。成人して2年後の『祝う会』に意味があるか疑問だ。自治体が公費を使い開催する以上、目的を明確にする必要がある」と強調した。【平川昌範、山口桂子、吉住遊】