加速する少子化 自治体、あの手この手で支援 地域間競争過熱の懸念 出生80万人割れ見通し

保育料や医療費の負担軽減、育児休暇への報奨金、商品券支給…。少子化が想定以上に加速する中、危機感を強める自治体はあの手この手で子育てしやすい環境整備に力を入れている。ただ、財政力によって格差が生じ、支援策を巡る地域間競争に拍車がかかる懸念も拭えない。
静岡県東部の長泉町。子育て関連の担当者は、全国で昨年1年間に生まれた赤ちゃんの数、いわば出生数が初めて80万人を割る見通しについて「新型コロナウイルス禍もあって減るのは仕方ないが、行政として減少カーブを緩やかにする必要がある」と話す。
第2子保育料無償
三島、沼津両市の間に位置し、高速道路や東海道新幹線・三島駅にも近い長泉町には多くの企業が集積する。近年、急速に進む宅地化に伴い、子育て施設整備や経済的な支援策に予算を重点配分し、女性1人が生涯に産む子供の推定人数を示す「合計特殊出生率」(平成25~29年)は1・80と県内トップだ。全国の1・30(令和3年)も上回っている。
町は来年度から第2子の保育園とこども園の保育料を無償化する。現在、3~5歳児は全国的に無償だが、住民税非課税世帯に限って無償だった0~2歳児について、世帯年収などに関係なく無償に。町の推計によると、年収600万円世帯では年約20万円の負担軽減となる。6歳に成長するまで計5万円分の「こども商品券」も支給する。
充実の誕生祝い金
全国的な少子化の主な原因とされる未婚・晩婚化の増加をよそに、きめ細かな支援策が奏功し、若年層の結婚が目立つのが新潟県聖籠町だ。合計特殊出生率は1・91(令和2年)、人口も増加傾向にある。
町は、誕生祝い金として第1子~第3子に各5万円、第4子以降に各10万円を支給。子供が4人以上の多子世帯には、末っ子が小学生になるまで月5千円の支援金を用意。加えて0歳から高校3年までの子供が通院、入院した際の医療費も助成するなど手厚い。
実際、「未来への投資」が若年層の結婚を後押ししている状況を裏付けるような調査がある。新潟大などとの共同調査(令和2年実施)によると、昭和61~平成2年に生まれた女性が20代に産んだ子供の推定数「出生率」は聖籠町が0・76。新潟市(0・38)など県内自治体を上回った。
町総合政策課の小林幸宏課長補佐は「町の出産・子育て支援策もあって早く結婚した女性が子供を多く出産しているのではないか」と指摘する。
「うらやましい」
一方、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で一部が避難区域となった福島県南相馬市。市の出生数は17年後に推計190人と、震災前の579人(平成22年)の3分の1まで落ち込む見通しだ。
震災で故郷を離れた若い世代に戻ってきてほしいとの思いも強く、市は今年度から結婚、妊娠・出産、子育て-と各ステージに合わせた支援メニューを拡充した。例えば、結婚の仲介者に〝成功報酬〟として1件5万円を用意すれば、新婚生活の支援金(最大30万円)や育児休暇取得の父親に報奨金(最大20万円)を支給。給食の無料化も小中学校まで広げた。
ただ、充実した子育て支援を展開できる背景には、豊かな財政力がある。長泉町などは多くの企業立地に伴う安定した税収を子育て支援に充てているが、多くの自治体は国からの補助金を含め財源確保に苦心している。
三重県の一見勝之知事は5日の記者会見で、東京都の小池百合子知事が表明した18歳以下の子供1人当たりに月5千円程度を給付する方針について「うらやましい。財源を持っているところはすごい」と指摘。その上で「都が先行すると、人口がそっちに動いてしまう危惧がある」とも述べ、支援策を巡る地域間競争の過熱に懸念をにじませた。(岡田浩明、本田賢一)
■少子化問題 厚生労働省の人口動態統計によると、全国の出生数は昭和48年の約209万人以降、減少傾向で、昨年は80万人割れとなる見通し。最終的には77万人台の可能性がある。政府の推計は「80万人割れ」を約7年後としていたが、想定を超えるペースで少子化は急進している。
未婚・晩婚化の影響に加え、新型コロナウイルス流行が長引く中、雇用環境や膨らむ教育費など将来不安から妊娠を控えるケースもあったとみられる。岸田文雄首相は少子化について「放置できない課題。異次元の対策に挑戦する」と表明し、今春発足のこども家庭庁を司令塔に子供関連予算の倍増を打ち出している。