無罪主張する講談社元社員の殺人事件、差し戻し審はどうなるか 刑事弁護人が徹底解説

妻を殺害したとして罪に問われた講談社元社員の男性について、最高裁は2022年11月、懲役11年とした高裁判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。 男性は「妻は自死だった」として一貫して無罪を主張。また妻の父も含め、友人ら関係者が支援する会を結成している。4人の子どもを抱えているため、保釈も求めている。 今後、審理はどういう経緯をたどるのか。また、否認している被告人が保釈される可能性はーー。刑事弁護に詳しい神尾尊礼弁護士に聞いた。 ●事案の概要 非常に痛ましい事件でした。 ある日、自宅で30代の女性が亡くなりました。頸部圧迫による窒息死でした。当時自宅にいたのは、夫と小さいお子さんたちでした。夫が刑事裁判にかけられました。妻を絞殺させたという、殺人罪に問われました。 主な争点は、夫が首を絞めたのか、妻が自死したのか、という点でした。 検察官は、夫が寝室で背後から腕で妻の首を絞め、窒息死する前に階段から落とすなどの偽装工作をしたとし、殺人罪に問えると主張しました。妻のおでこからは出血がありましたが、この偽装工作時についたものとしました。 弁護人は、妻が包丁を出したのでもみ合いになり、夫は寝室で押さえつけ、子ども部屋に逃げた、部屋の外では物音がし、しばらくして部屋を出ると階段の手すりで首を吊っていた、つまり自死であって殺人罪ではないと主張しました。おでこの傷は、活動時に生じた傷であるとしました。 1審の裁判員裁判は懲役11年と判断、高裁も支持しました。2022年11月、最高裁は「顔の血痕について審理が不十分」だとして差し戻しました。それぞれの判決のポイントについてはこちら。 ●事後審である以上、最高裁の注文通りの審理 刑事裁判は三審制ですが、高裁も最高裁も「事後審」とされています。一から審理をやり直すのではなく、原判決が合っているか間違っているかを審理するというものです。 判決を紹介するときに、原判決に言及する形で判示されているのは、この事後審としての性格を反映したものです。したがって、証拠を無制限に出せるわけではなく、審理の対象は限定的になります。 また、差し戻し審は、上級審の判断に拘束されます(裁判所法4条参照)。上から「ここが間違っている(足りない)」といわれたのに、それを無視して独自に判決を出したら、また差し戻されるというエンドレスなやりとりになってしまいます。 本件では最高裁の注文どおり、具体的には、顔面の血痕、おでこからの出血を中心に主張立証がされ、さらにそれを踏まえて他殺・自死の可能性を検討していくことになります。 ●裁判員のために争点の明確化が主流に
妻を殺害したとして罪に問われた講談社元社員の男性について、最高裁は2022年11月、懲役11年とした高裁判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。
男性は「妻は自死だった」として一貫して無罪を主張。また妻の父も含め、友人ら関係者が支援する会を結成している。4人の子どもを抱えているため、保釈も求めている。
今後、審理はどういう経緯をたどるのか。また、否認している被告人が保釈される可能性はーー。刑事弁護に詳しい神尾尊礼弁護士に聞いた。
非常に痛ましい事件でした。
ある日、自宅で30代の女性が亡くなりました。頸部圧迫による窒息死でした。当時自宅にいたのは、夫と小さいお子さんたちでした。夫が刑事裁判にかけられました。妻を絞殺させたという、殺人罪に問われました。
主な争点は、夫が首を絞めたのか、妻が自死したのか、という点でした。
検察官は、夫が寝室で背後から腕で妻の首を絞め、窒息死する前に階段から落とすなどの偽装工作をしたとし、殺人罪に問えると主張しました。妻のおでこからは出血がありましたが、この偽装工作時についたものとしました。
弁護人は、妻が包丁を出したのでもみ合いになり、夫は寝室で押さえつけ、子ども部屋に逃げた、部屋の外では物音がし、しばらくして部屋を出ると階段の手すりで首を吊っていた、つまり自死であって殺人罪ではないと主張しました。おでこの傷は、活動時に生じた傷であるとしました。
1審の裁判員裁判は懲役11年と判断、高裁も支持しました。2022年11月、最高裁は「顔の血痕について審理が不十分」だとして差し戻しました。それぞれの判決のポイントについてはこちら。

刑事裁判は三審制ですが、高裁も最高裁も「事後審」とされています。一から審理をやり直すのではなく、原判決が合っているか間違っているかを審理するというものです。
判決を紹介するときに、原判決に言及する形で判示されているのは、この事後審としての性格を反映したものです。したがって、証拠を無制限に出せるわけではなく、審理の対象は限定的になります。
また、差し戻し審は、上級審の判断に拘束されます(裁判所法4条参照)。上から「ここが間違っている(足りない)」といわれたのに、それを無視して独自に判決を出したら、また差し戻されるというエンドレスなやりとりになってしまいます。
本件では最高裁の注文どおり、具体的には、顔面の血痕、おでこからの出血を中心に主張立証がされ、さらにそれを踏まえて他殺・自死の可能性を検討していくことになります。