群馬県内の老人ホームや老人福祉施設などで2021年度、職員による高齢者虐待について相談・通報が48件あり、このうち虐待と認められたケースが10件だったことが県の調査で明らかになった。ともに過去最多だった。コロナ禍で外部との交流が減り、余裕がなくなっていることが背景にあるとみられる。【川地隆史】
厚生労働省の高齢者虐待防止法に基づく調査の一環で、県と市町村が回答した。
虐待と認められた10件のうち、虐待の種類別(複数回答)では身体的虐待が8件と最も多く、心理的虐待が3件と続いた。虐待が発生した要因(同)は▽虐待防止や身体拘束廃止に向けた取り組みが不十分▽職員のストレス・感情コントロール▽介護に手がかかる、排せつや呼び出しが頻回――がそれぞれ9件だった。
昨年12月には、渋川市の住宅型有料老人ホームを運営する高山村の事業者に対して県が業務改善命令を出している。県によると、職員が入居者の体を拭かないまま不衛生な状態にしていたなど、複数の身体的・心理的虐待があったとしている。また、1月10日には、桐生市の特別養護老人ホームで、入所者に熱湯をかけたとして当時施設で働いていた介護士が傷害容疑で逮捕される事件もあった。
なぜ施設で虐待が起きてしまうのか。介護福祉士として働いた経験があり、虐待防止活動をする県社会福祉士会の高橋知之さんは「職員のストレス増加や、介護に関する知識の不足が要因と考えられる」と指摘する。コロナ禍で施設の利用者や職員に行動制限がかかり、職員自身が閉塞(へいそく)感を感じながら、利用者からのストレスの板挟みになると、虐待につながりやすいという。また、「(感染拡大防止のため)施設間の移動ができず、適切な施設に入所できない利用者が増えると、体の状態に合った介護ができずに虐待が起こりやすい」と話す。
虐待が明らかになると、自治体は業務改善指導などの行政処分を出すが、高橋さんは「書面で改善を報告しても根本的な解決にはつながらず、外部機関が介入して改善のための対応ができる仕組み作りが必要」と訴える。