関東を中心に各地で計30件以上起きた広域強盗事件に絡み、フィリピンの首都マニラの入管施設で収容されている容疑者の日本人の男4人について、強制送還がフィリピン側に正式要請された。4人には事件の指示役とされる「ルフィ」や「キム」らが含まれるとみられる。東京・狛江市では実行役が強盗殺人事件を起こしており、指示役のルフィらは日本で裁かれ有罪なら重い刑が予想される。4人としては強制送還を避けたいところだろうが、入管施設もかなり危険な場所となる。
強制送還について在フィリピン日本大使館は30日、フィリピンのレムリヤ法相に対して正式要請を行ったことを明らかにした。警視庁は4人の容疑者に対して、いずれも特殊詐欺事件で逮捕状を取っている。移送されれば、特殊詐欺事件の容疑で逮捕した後、強盗事件への関与についても調べる方針。
容疑者を被告として係争中のフィリピンの刑事事件が送還の障害になっている場合は、事件が事実か否かを調べ、虚偽と判明すれば事件を棄却して強制送還となる。
4人は渡辺優樹容疑者(38)、今村磨人容疑者(38)、藤田聖也容疑者(38)、小島智信容疑者(45)。フィリピン地元紙によると、2021年の逮捕時、渡辺容疑者はケンジ・シマダ、小島容疑者はトモノブ・サイトウと名乗っていた。
4人は、フィリピン入国管理局が2019年11月にマニラで日本人36人を拘束した特殊詐欺グループの幹部で、キャッシュカードを盗んだとする窃盗容疑などで逮捕状が出ている。
フィリピン警察が「ビッグボス」と呼んでいた渡辺容疑者が主犯格とみられ、国家に守られた“安全”な入管施設から指示して強盗を行わせてきたが、今後は入管施設自体も危険だ。
特殊詐欺のマニュアルを作成した人物を知る元暴力団関係者は「そもそも逮捕前にフィリピンでやっていた特殊詐欺は、金主が用意したアジトの廃ホテルを拠点としていた。渡辺容疑者の上に何段階も反社会的勢力が存在する。日本で公判となり、少しでも罪を減らせる情状狙いで、ペラペラしゃべられてはたまらないと思う存在がいるかもしれません」と指摘する。
この入管施設は世界中からフィリピンに逃亡してきた上、犯行を犯した“ワル”が収容されているが、各国で“不審死”が報じられている。
07年5月には米国人が職員に襲いかかり、職員に射殺された。07年9月にはベトナム人が死んだ状態で発見され、調べではインド人、バングラデシュ人、ベルギー人の収容者が関係あるとされたが、その後の詳細は不明。19年2月には米国人が裸で死んでいる状態で発見され、「睡眠中に肺結核に起因する合併症」と説明されたという。21年1月には韓国人が死んでいる状態で発見され、検視結果は保留となった。多くのケースが、独房で亡くなったようだ。
渡辺容疑者は21年の逮捕後に入管施設に移送され、コロナ陽性反応が出たとして、隔離されたことがある。数万円で何でもする収容者がたくさんいるというだけに、過去に不気味な死亡例があることは気になる。