すし詰めの収容所、「VIPルーム」で仲間と和牛…元収容者「どのように収入得ていたのか」

関東など各地で相次いだ強盗事件を巡り、フィリピン司法省と在マニラ日本大使館が30日、現地の入管施設で拘束されている日本人の男4人について、身柄の引き渡しに向けた協議を行った。大使館によると、日本側は改めて早期の送還を要請し、フィリピン側は「直ちに必要な手続きを行いたい」と応じたという。
捜査関係者によると、現地で拘束されているのは、渡辺優樹(38)、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)の4容疑者。いずれも2019年にフィリピンで摘発された特殊詐欺グループの指示役として、警視庁が窃盗容疑などで逮捕状を取っている。4人のうち渡辺容疑者は以前、一連の強盗事件の指示役と同じ「ルフィ」を名乗っていたという。
渡辺容疑者ら4人はフィリピンの首都マニラ近郊にある「ビクタン収容所」で拘束されている。不法滞在などで強制退去が見込まれる外国人らを収容する施設だ。最近まで数年間、この施設にいた60歳代の日本人男性が取材に応じた。
「金さえあれば、何でもできる」。男性は施設の実態をそう明かす。
施設には日本人のほか韓国人や中国人などが収容されている。通路や共有スペースに2段ベッドが並び、定員(約140人)を大幅に超える約300人がすし詰め状態で過ごしている。ネズミや虫がおり、とにかく不衛生だという。

職員への賄賂が横行し、スマートフォンやパソコンだけでなく、酒や違法薬物も手に入る。賄賂は、面会人から受け取った現金を充てるか、スマホを使った電子マネーを使用。一部の収容者が施設内で「銀行屋」をしており、手数料を受け取って現金の出し入れを手伝っているという。
4人のうち渡辺容疑者と今村容疑者は、入所後しばらくして、それぞれシャワーやトイレ付きの「VIPルーム」に移った。エアコン、扇風機などの家電や、スマホを自由に使用。提供される質素な食事を嫌がり、ピザやファストフードなどの出前を取っていた。
和牛10キロや、マグロ1匹を丸ごと仕入れ、仲間と一緒に食べていたこともあったという。男性は「どのように収入を得ているのか疑問だった」と振り返る。
男性は、4人のうち1人が複数のスマホやSIMカードを肌身離さず持ち、日本人の氏名や連絡先が書かれた名簿を持っていたことを覚えている。「悪いことをしていたのは明らかだが、追及する職員はいなかった」と話す。
4人のうち別の1人は、周囲に「弁護士を通じて架空の告訴事件を作り、フィリピン国内で容疑者になれば強制送還されない」と話していたという。男性は「帰国を避けたい収容者の間では常とう手段で、中には15年間居座った人もいた」と語った。