大阪で、とんでもない「疑惑」が浮上している。
大阪府と大阪市は昨年1月から、IR(カジノを中核とした統合型リゾート)の誘致計画となる「区域整備計画」案の公聴会を複数回開催してきた。
そこで開陳された内容をめぐり、在阪メディアは批判と「疑惑」を報道している。2月中旬に開催予定の大阪市会(市議会)でも、これらが台風の目となることは間違いない。ポイントは2点。
第1は、巨額の公費負担だ。大阪市は、IR建設予定地の土壌対策費として約790億円も負担をする。大阪府と市は以前、「IRで公的負担はない」と説明してきたため、この妥当性を問う声が高まっている。
吉村洋文・大阪府知事、松井一郎・大阪市長の過去の発言をあげつらうような報道(朝日新聞、2022年1月27日)もある。
「IRは民設民営事業なので、公でお金を出すものではない」(吉村知事、21年7月21日)
「事業者がお金を払って建ててくれる。市は家賃をもらうだけ」(松井一郎市長、20年10月23日)などが代表的なものだ。
「公費負担なし」を力強く宣言していたのは、現職の知事、市長だけではない。筆者が大阪市会のアーカイブを検索すると、次のような発言が出てきた。
「今御指摘あった公費負担の可能性というところなんですが、これは基本的には公費負担はないと。民間事業者が設置及び運営するということが原則になっています」
これは、15年2月27日に開かれた大阪市会定例会での橋下徹市長(当時)の発言だ。このあと橋下氏は、前年に廃案となった「IR推進法案」(16年に可決成立)にも触れながら、こうも述べている。
「事業費、事業規模、内容など未確定ではありますが、このIR施設のために必要となる埋め立てや鉄道、道路などの基盤整備については、基本的にはIR事業者に負担を求めるべきものであると考えております」
この橋下氏の答弁はいかにも法律家らしく、次のように締めくくられた。
「原則は民間事業者が設置及び運営するものが、この法律上定義されたIRであります」
このとき、しつこいほど繰り返された「原則」はどこへ消えたのか。法定の公聴会のみならず、大阪府と市から全国に向けた確たる説明が聞きたい。
第2のポイントは、IR用地を不動産鑑定での「談合疑惑」だ。
大阪市は、IR用地の価格を算定するため、4社に不動産鑑定を依頼したのだが、そのうち3社の鑑定額が、土地の価格から賃料、利回りまでピタリと一致していたのだという。共同通信は先月16日、「大阪IR用地に市民が監査請求」「鑑定一致、違法契約と主張」などと報じている。