「銀行口座も作れない」「家も借りられない」元暴力団員 “ヤメ暴”の過酷な生活とは

暴力団組員は、銀行口座の開設や賃貸契約などを禁じられていますが、元暴力団組員、いわゆる“ヤメ暴”も、5年程度は同様の制限がつきます。「普通の暮らしがしたい」と地道に頑張るヤメ暴の男性を取材。一方、規制を受けない反社会的勢力、いわゆる“半グレ”が今深刻な問題に。半グレの実態も追いました。
「自分の力ではどうにもできない」“ヤメ暴”も契約ができない現実
タカシさん(仮名・20代)は「元暴力団組員」いわゆる“ヤメ暴”です。銀行業界には暴力団関係者に口座の開設を認めないというルールがあり、離脱してヤメ暴となってからも5年程度はその制限が続きます。そのため給料も手渡しでしか支給できません。しかも、それだけではありません。
(タカシさん)「住むところに関しては、契約出来ないっていうのが一番大きいのでそこは会社に頼らざるを得ない部分ではある。自分の力ではどうにもできない」
住宅業界も、組事務所などに使われないよう家を貸しません。銀行口座も住む場所もなければ就職は難しく、一度暴力団に身を置くと社会復帰は極めて難しいのが現実です。
タカシさんは現在、建築現場の作業員として働いていますが、ヤメ暴であることを多くの同僚は知っています。
(タカシさんの同僚)「真面目ですね。(作業には)慣れていないけど、いまは真面目にやっています」
もとはマジメな性格。高校を卒業後、建築関係などの仕事をしていましたが、知り合いを通じて暴力団とのつながりができました。
(タカシさん)「夜の仕事をしていた時の知り合いが、暴力団とつながりがあった。『組の方に入らないか』と誘いがあって、楽しそうだなと思い興味本位で入りました」
組員となったのは2021年。最初はただの興味本位でした。
「殺されるかもしれない…」暴力団としての生活に後悔
やっていたことは、事務所の掃除や組長の運転手などの雑用でしたが、恐怖がつきまとう毎日でした。
(タカシさん)「結構つらいこともあった。(雑用を)やらないと、ひどいときは殺されるかもしれなかったので、自分の思いや気持ちは二の次で組長や上の人のために毎日やっていた。(暴力団に入ったことを)正直後悔しています。時間などを無駄にしてしまったのが一番の後悔です」
そんな中、組内部のトラブルに巻き込まれ、タカシさんは2022年、着の身着のままで逃げました。愛知県に来たところで所持金も底をつき、暴力団被害者の相談を受け付ける団体に助けを求めたのです。
「暴力団離脱者の社会復帰を推進」愛知県警の取り組みとは
愛知県警は数年前から、タカシさんのような暴力団離脱者の支援を重要課題に挙げています。
(愛知県警・鎌田徹郎本部長)「組織から離脱意志を有する暴力団員に的確な離脱支援を行い、離脱後の就労先となる受け入れ企業を獲得するなど、暴力団離脱者の社会復帰を推進していきたい」
反社会的勢力に再び戻らないよう県警は離脱者の就活支援の係を設置。元組員の雇用に対する給付金や損害補償の制度も作り、受け入れ先の協力企業は現在52社あります。タカシさんもこの制度で就職することができました。
(愛知県警 捜査4課・伊藤博康警部)「警察などによる社会復帰対策を正しく理解していない場合から(暴力団からの)離脱をためらうケースもあるかと思います。このようなケースをより一層減らして警察の支援を受けて、社会復帰出来るようにしていくことが警察の今後の展望です」
暴力団を離脱したタカシさんは、警察の支援を受け働いています。
(タカシさん)「夜ご飯にパスタを買いました。あんまり食べないので、これ一つで夜を済ませます」
両親や友人とはすっかり疎遠になっているそうですが、何とか普通の暮らしが続けられるよう、今は地道に頑張るしかないと話します。
(タカシさん)「せっかく入らせてもらった会社に、少しでも貢献できるように頑張りたい。消せない過去ではあるし、過去を見つめ直しても仕方がないので自分も気を張って過ごしていかないといけない」
規制を受けない新たな反社会勢力「半グレ」集団の脅威
2022年の暮れに、日本最大の暴力団組織六代目山口組の司忍組長が愛知県瀬戸市で餅つきを行っていました。神戸の本部や名古屋の中核施設では、集団で集まることが禁じられているため傘下の小さな事務所で集まっているのです。
「みかじめ料の要求」などを禁じた暴対法が施行されて、約30年。徹底的な取り締まりにより、組員の数は現在約2万4000人と4分の1近くにまで減りました。暴力団への法的な締め付けが強まる一方、そうした規制を受けない反社会的勢力が深刻な問題に。いわゆる「半グレ」です。
2022年10月、東京・池袋の飲食店で起きた100人規模の乱闘騒ぎでは、半グレ集団「チャイニーズ・ドラゴン」の幹部5人が逮捕されました。
取材班は半グレの実態を知るため、大阪市中心部で複数の飲食店を経営していた元半グレの男性に話を聞きに行きました。
男性は同業他社とのトラブルで集団での暴力事件を何度も起こし、警察から「半グレ」としてマークされていました。しかし、暴力団に属したことは一度もないと話します。
(元半グレの男性)「(Q暴力団からの勧誘はあった)いっぱいありました。『うちで面倒見させてくれ』とか、『下についてくれ』と言われた」「(Q入らなかった理由は)特に興味がなかったから」「(Q入ったら面倒だなとか)それももちろんあります」
男性は傷害や恐喝未遂の事件で10回以上逮捕されています。
(元半グレの男性)「僕自身が半グレと思っていないので、半グレのリーダーという認識がない。(大阪の)ミナミの活動が長かったので、下の子が慕ってくれていた」
警察は、半グレについて「特殊詐欺や窃盗」などに関わっているケースもあり、そのうちの一部は暴力団の資金源になっている可能性もあるので、取り締まりの強化に努めています。
CBCテレビ「チャント!」2月1日放送より