ロシアによるウクライナへの侵略が始まって1年となる24日を前に、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使(60)は9日、千葉県銚子市の千葉科学大で特別講義を開いた。「ロシア軍の犯罪は、言葉で表せないほど残虐なものだ」として今後、その責任を追及していくことを強調。出席した学生ら約200人は、熱心に耳を傾けていた。
コルスンスキー氏は、ロシアによるウクライナ侵略の経過を写真や図を使って説明し、最後には学生からの質問に答えた。「世の中の大変なことに対する覚悟はとても難しいが、覚悟していかなければならない」と語った。また、「大使からのプロパガンダだけでなく、個人的な交流ができると良い」と学生にウクライナの文化や人との関係促進を訴えた。
講義で司会を務めた危機管理学部3年の金城旭さん(22)は「話を聞いて遠い国の話ではないと思った。戦争の残虐さを痛感した」と話した。
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コルスンスキー氏の講義の要旨は、次の通り。
昨年2月24日、ロシアがウクライナを攻撃したとき、ほとんどの世界は、ウクライナはせいぜい3日間で降伏する、長くても1週間であきらめるという予測があった。
ウクライナから避難しなくてはいけなくなったのはおよそ800万人。それはウクライナのほとんどの地域の女性と子供の人数にあたる。その中の2500人は、日本で受け入れられている。実は日本にとっては前例のない意思決定だった。大変感謝している。男性は動員されたら本人が行かなくてはいけないので出国が許されていない。
GDP(国内総生産)の35%が失われてしまった。多くの学校や病院、住宅が破壊された。ミサイルはおよそ2500発発射され、800発ほどは弾道ミサイルだった。数百万人のウクライナ人がロシアに拉致され、そのうち確認されている子供は1万4千人といわれているがもっと多いと思われる。エネルギー市場に対する影響は、日本でも感じられる。
私がここで話す間も、最前線では毎日、何回もロシア軍が攻撃を続けている。だが、ウクライナはクリミアも含めてすべての地域を奪還する。ロシアに責任を取ってもらい、物理的被害の賠償を払ってもらう。戦争犯罪に関しても、国際裁判プロセスによって責任を取ってもらう。
今の世界ではインターネット、スマートフォン、フェイスブック、ツイッターなどがあり、(戦争犯罪の痕跡を)隠すことは、ほとんどできなくなっている。写真の資料は裁判の根拠になると限らない。特殊な手法で集められた証拠でないといけない。ウクライナがすべての犯罪の証拠を保つために、国連や独仏など諸国の専門官を招待し、証拠を記録してもらっている。すでに刑事事件となっている。裁判の過程ではすべての資料が提出される。
ロシア軍の犯罪は言葉で表せないほど残虐なもの。文明社会で育てられた人にとって想像ができないような犯罪だ。すべての証拠と記録が残っている。犯罪の残虐さ、件数が多すぎてジェノサイド(集団殺害)と思われるだろう。
ウクライナはロシアと一緒にいたくない。ウクライナの法律に基づいて暮らしたい。EU(欧州連合)、NATO(北大西洋条約機構)に加盟し、民主主義国家として発展していきたい。(前島沙紀)