福岡1歳虐待死 エアガン発射の父親に懲役16年 地裁判決

2018年12月に福岡県田川市で1歳4カ月の男児が医師の診察を受けずに低栄養状態で死亡し、遺体にエアガン発射によるとみられるあざが多数見つかった事件で、傷害と保護責任者遺棄致死罪に問われた父親で無職、常慶(じょうけい)雅則被告(27)に対し、福岡地裁は9日、求刑通り懲役16年の判決を言い渡した。冨田敦史裁判長は「相当衰弱した被害者を的にし、エアガンでBB弾を至近距離から多数発射・命中させており、人格や尊厳を無視し極めて残酷だ」と指弾した。
常慶被告は起訴内容を否認し、弁護側は無罪を主張していた。公判では①亡くなった三男唯雅(ゆいが)ちゃんの全身に71カ所あった円形の傷は、被告がライフル型エアガンでBB弾を発射してできたものか②唯雅ちゃんが衰弱し、医師の診察・治療を受けさせる必要がある状態と被告が認識していたか――が主な争点となった。
判決は、自宅から押収されたエアガンは被告の所有物で、発射には大人でも相応の力を込めて引き金を引く必要があると指摘。被告はサバイバルゲームに参加するなど操作に習熟している一方、エアガンに興味のない妻の藍(あい)受刑者(27)=保護責任者遺棄致死罪で懲役8年が確定=や他の子どもたちが用いたとは考えられないとして、被告が故意に唯雅ちゃんへ命中させたと認定した。
また、医師の見解などから、唯雅ちゃんは亡くなる前月の11月には体を触るたびに泣いたり、食事を取ることも困難になったりしていたとして「同居の親が異常に気づかないはずがない」と判断。藍受刑者と共謀して唯雅ちゃんを保護せずに放置したと結論付けた。
その上で、動機について「エアガンで執拗(しつよう)に撃って虐待しており、根底には被害者への悪感情が見て取れる。虐待の発覚を恐れ、不保護を継続したこともうかがわれる」と推し量った。
判決によると、常慶被告は18年11月、唯雅ちゃんに対し、エアガンでBB弾を至近距離から多数回発射する暴行を加え、全身に全治3週間の円形の傷を負わせた。更に藍受刑者とともに、重度の低栄養状態に陥り、肺感染症を発症した唯雅ちゃんを医療機関に受診させず、同12月に急性呼吸不全で死亡させた。
最後まで事件について語らず
常慶雅則被告は初公判で「違います」と起訴内容を否認して以降、被告人質問でも「お話ししません」と繰り返すなど、事件について語ることは最後まで無かった。公判中は席に座って前を向き、じっとしていることも多く、判決が読み上げられた時も静かに聞いていた。
そんな常慶被告も、公判で妻の藍受刑者が出廷した時だけは終始、下を向いたまま顔を上げることはなかった。ただ、藍受刑者自身も「覚えていません」などと繰り返すことが多く、代わりに藍受刑者の公判資料が証拠として採用された。
9日の判決後、記者会見した裁判員は「難しい事件だった」と振り返った。
裁判員の一人は「動機も分からず、難しい裁判だった。いろいろな証拠を積み重ねて考えた」と語った。補充裁判員を務めた40代女性は「被告には人の痛みを知ってほしい。服役を終えて再出発する時は、人を痛めつけるのではなく、守る人になってほしい」と願った。【平塚雄太】