滋賀県日野町で1984年、酒店経営の女性(当時69歳)が殺害されて金庫が奪われた「日野町事件」で、強盗殺人罪で無期懲役が確定し、服役中に75歳で病死した阪原弘(ひろむ)・元被告について、大阪高裁(石川恭司裁判長)は、裁判のやり直し(再審)を認めるかどうかの決定を27日に出すことを決めた。弁護団が13日、明らかにした。事件は殺害を裏付ける直接証拠がなく、捜査段階の自白の信用性が争点になっている。
大津地裁が2018年7月に再審開始の決定を出し、検察側が即時抗告していた。死刑や無期懲役の判決が確定した事件のうち、元被告の死後に再審開始決定が出たのは戦後初めてで、高裁も「死後再審」を認めるかどうかが注目される。
元被告は事件の発生から4年後に逮捕され、捜査段階で関与を認めたとされる。公判では一転して無罪を主張したが、00年に最高裁で無期懲役が確定。元被告本人が再審請求したが、11年に病死で手続きが終了したため、遺族が翌12年に再び請求した。
第2次再審請求審では、検察側が多数の証拠を初めて開示。元被告が遺体や金庫の発見場所を捜査員に案内した「引き当て捜査」の実況見分調書に、現場から帰る時の写真が案内時のものとして一部使われていたことが判明した。
地裁決定はこうした点も踏まえて警察の取り調べについて誘導を示唆。「警察官から暴行や脅迫を受けた疑いがある」とも指摘し、自白の任意性や信用性を否定した。検察側は即時抗告審で自白の強要などはなかったと反論し、地裁決定の取り消しを求めた。【山本康介】