東京・足立区の駅で、電車の非常用ドアコックを勝手に操作した挙句、事情を聴こうとした駅員に暴行し、線路に飛び降りて逃げたとされる男が逮捕された。ドアコックを操作した動機について、男は、「花粉症によるイライラを解消するため」と話している。
会社員の石井幸康容疑者(39)は、今月6日午後9時半ごろ、足立区の東武スカイツリーライン西新井駅で、停車中の電車の中で、19歳の男性駅員に対して、肩を殴るなどの暴行をして、ケガをさせた疑いがもたれている。男性は、肋骨を折るなど、全治6週間の重傷を負った。
当時、石井容疑者は、到着した普通電車に乗り込もうとして、降りてきた乗客と肩がぶつかったという。この時、「イラっとした」そうだ。その上、花粉症の症状でダルさを感じていて、イライラが重なっていたとのこと。
その後、いったん、電車のシートに座ったものの、イライラが募っていた石井容疑者。そこで、そのイライラを解消するため、電車の非常用ドアコックを操作したという。非常用ドアコックとは、電車などの自動ドアを、手動で開けるための装置だ。
自分が”犯人”だとバレるのは良くないと思ったのか、石井容疑者は「ヒヤヒヤしながら」、座席に戻り、寝たフリを始めたという。すると、ドアコックが操作されたとの合図を確認した駅員2人が、車両に現れたとのこと。
駅員2人が、他の乗客から話を聴いたところ、すぐに石井容疑者の”犯行”が発覚。なおも、寝たフリを続ける石井容疑者。駅員2人が近づいてきたところで、石井容疑者は、持っていたペットボトルを床にたたきつけて、5号車から6号車に移動したという。
そこで、2人の駅員は、二手に分かれて、石井容疑者を挟み撃ちにした。車両内でもみ合いになり、石井容疑者が、2人のうちの19歳の男性駅員の肩を複数回、殴ったという。さらに、電車を降りて、ホーム上に逃げ、非常停止ボタンを押したのだった。
それから、石井容疑者は、ホームから線路に飛び降り、駅の西側のフェンスを乗り越えて、逃走したとのこと。何とも、驚きの逃走劇だったのだ。
ところが、石井容疑者の身元は、あっさり判明することとなった。当時、石井容疑者は、トートバッグを持っていた。しかし、もみ合いになった際、駅員につかまれたため、そのまま、バッグを捨てて逃走していたのだった。
バッグの中からは、石井容疑者の勤務先の会社名が入ったシールが見つかった。さらに、仕事で使う工具や衣類まで入っていたという。警視庁西新井署が、社長から話を聴き、”逃走劇”を捉えた防犯カメラの映像を確認してもらったところ、石井容疑者の関与が浮上したという。
西新井署の調べに対して石井容疑者は、「駅員を殴ったという認識ではなく、右腕を振り回し、右手で駅員の左肩付近を叩いたという認識です」などと、容疑を一部否認しているという。
一方で、非常用ドアコックを操作した動機については「イライラが募っていた中で、これまでに操作したことがないドアコックを操作することで満足感を得ようとした」と供述。
また「一度もひいたことがなかったので、好奇心を満たしてイライラを解消しようと思った」「空気が抜ける音がして、初めての体験をしてイライラが解消された」と話している。事件の影響で、当日、東武スカイツリーラインは、合わせて6本が遅延したという。