新型コロナワクチンは当面、無料接種が続く見通しとなった。だが、いずれ有料化されるのは、誰もがわかっていることだ。ワクチンメーカーはボランティアではないし、国のお金を投入すべき局面も終わろうとしている。だが、その日は思った以上に近づいていて、思った以上に高額かもしれない。
新型コロナワクチンは贅沢品に?
新型コロナの感染症法上の位置づけが、現行の「2類相当」から「5類」に切り替わる。期日は今から約3カ月後、5月8日に決まった。ワクチンの公費接種は4月以降も継続するとの政府方針が示されたが、いつまで無料かはこれからの議論で、2月中にも見通しが示されるという。実務を請け負っている自治体と医療機関は、遅かれ早かれ切り替え準備に追われることになる。
接種を受ける側にしてみれば、最も気になるのはその価格だろう。実施しているクリニックとしても、今後の接種体制に大きく関わる問題だ。
これについては昨年10月、新型コロナワクチンの最大の供給者であるファイザーが、通常の流通・販売ルートに乗せる際の価格を「1回あたり110~130ドル」(現在のレートで1万4000円~1万7000円程度)と計画していることが報じられた。2023年下半期にも移行するという。
その前月にはモデルナの想定が「64~100ドル」と報道されていたことから、ファイザーの強気な価格設定には驚きの声が上がった。だが、モデルナも今年1月、アメリカ政府の購入プログラム終了時には、ファイザーとまったく同じ「1回あたり110~130ドル」に値上げしたい意向を示した。(The Wall Street Journal)
一般に競争相手が少ない場合、価格競争に持ち込まなくても顧客を確保できるため、市場原理が働きづらい。結果、価格が高止まりしたまま横並びになりやすいのだ。ファイザーとモデルナの強気な価格設定は、典型例といえるだろう。
つまり、新型コロナに関しては当初、さまざまな種類のワクチン開発競争が繰り広げられたものの、その効果とシェアで2社のmRNAワクチンが世界を制したと言っていい。しかもユーザー側にとっても、両社の製品に大きな差は感じられない。どちらも無益な争いよりも、足並みを揃えるほうが得策と判断するに決まっている。
そもそも新型コロナワクチンの原価はいくらくらいか、ご存じだろうか。
「原価120円」を3500円で購入したイギリス政府
ワクチンの不公平撤廃を求める100超団体の連合体「The People’s Vaccine Alliance」によれば、原価はファイザー製で1接種あたり1.18ドル(約120~160円)相当だという。これについてファイザーは特に否定していないようだ。