東京で桜開花なぜ早い、今年も全国トップ予想…気温上昇だけでは説明つかない部分も

桜前線の上陸まであと1か月。気象情報各社が開花予想を相次ぎ発表している。暖かい地域から咲き始めて徐々に列島を北上する中で、目を引くのが東京の開花の早さだ。今年は九州などを抑えて、全国で最も早いとの予想もある。それほど南にあるわけでもない東京が、なぜこんなに早いのか。(池田寛樹)

気象情報会社「ウェザーニューズ」が16日に発表した桜の開花予想では、東京の開花は3月20日。福岡と並んで全国トップだ。
ほかの気象情報会社でも、ウェザーマップは同17日と、こちらも福岡と並んで全国で最も早い。日本気象協会は同22日で、九州や四国の一部よりは遅いが、本州では広島などと並んで一番早い。
ちなみにウェザーニューズは昨年もこの時期、東京の開花は全国で最も早い3月19日と予想していた。実際の開花は同20日で、福岡の17日や高知の19日よりは遅かったが、本州で最も早かった。
直近で実際に東京の開花日がトップだったのは2020年。過去5年間は毎年5位以内で、同社の担当者は「今年の開花は全国的に平年並みか、やや早い見込みだが、東京が桜前線をリードする」と話す。

東京都心は、広島や大阪よりも北に位置するのに、なぜ桜前線が一足早く到着するのか。
ウェザーニューズの担当者が要因と考えるのは、桜の開花の発表に使われる標本木の樹齢などの影響だ。
気象庁の開花宣言は、47都道府県の58地域にある標本木の開花状況に基づく。花が5、6輪咲いたら「開花」、8割以上のつぼみが開いたら「満開」だ。
桜の種類は沖縄、奄美地方と北海道の一部を除き、ソメイヨシノで統一されている。そして、ソメイヨシノは樹齢40~50年になると、若い頃に比べて開花が早くなる傾向があるという。
公益財団法人・日本花の会特任研究員の和田博幸さんは「樹齢を重ねたソメイヨシノは、幹や葉の成長にエネルギーを割く必要がなくなる。開花に集中できるため、花の数が多くなり、咲くのもやや早まる」と解説する。また、樹勢を保つための管理状況も重要だという。
東京の標本木は靖国神社(千代田区)境内にある。靖国神社によると、樹齢は定かではないが、気象庁が標本木に選んだ1966年には既に成木だったという。
また、標本木の根が弱らないよう、土壌を軟らかくし、通気性や水はけを良くする手入れもしており、これが東京の開花日の早さにつながっているというのが、和田さんの見方だ。

東京管区気象台の担当者は「周辺の桜も観察しているが、必ずしも標本木が一足早く咲くわけではない」とし、個体差より、地方都市に比べて上昇傾向にある大都市の気温が要因とする。
気象庁によると、日本の平均気温はこの100年で1・28度上がったが、東京都心では3・3度も上昇した。統計では、東京の開花日が最も早かった年は記録が残る1953年以降で6回あるが、うち4回が2000年以降に集中する。都市化による気温上昇で開花が早まったという見方だ。
平均気温の上昇幅は名古屋、横浜、大阪でも2・5度以上で、30年前に比べるとこうした都市での桜の開花の平年値も早まっている。
ただし、東京のこの間の3月の平均気温は9・4度。鹿児島(12・8度)や高知(11・2度)よりも低く、気温の上昇だけでは説明がつかない部分も残る。
一般社団法人・日本樹木医会理事の小林明さんは「樹齢や気温の上昇が開花を早める要素になるのは確かだが、開花時期には冬の冷え込みも影響する。東京の開花がこれほど早い理由は、慎重に分析する必要がある」と話している。